東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

KISS

私たちは昨年、東京操体フォーラムIn Madridで初の海外セミナーを行いました。個人的に海外は何度か経験していましたので特に文化の違いなどでビックリするようなことは無かったのですが、その中で唯一、サプライズ的にビックリしたのが、全てのプログラムを終了し、受講証の授与を行っていた時でした。参加者の女性の方が、握手の代わりに顔をスッと目の前に出して来たのです。
これは頬と頬を合わす挨拶のようですが、中には分からず唇を出したのも居ました・・
どうやらラテン系スペイン・イタリア・ブラジル圏では相手の左頬に行って次に右頬と左右に行くようですし、アメリカなどは左頬だけの様です。
私なんぞは慣れていないので、相手も女性ですしソフトに行くと、結構『ガチン!』と音がする位の勢いで来られるので、艶っぽい状況も無く、拳と拳を合わす位の挨拶に感じました。
挨拶だけでも国が違うとまぁ、色々あるもんだと感心したのを思い出しました。
 歴史的にも日本人は挨拶として『キス』をする習慣は無かったようですが、昨今は電車の中や公衆の面前でも平気でキスをする輩が増えて、私のようなオッサン連中は『家でやれ!』とか思いつつ、苦々しくその様子を見たりしています。この公衆の面前でディープなキスだけは何度見ても羨ましいとは絶対に思いませんねぇ・・・
古来から日本では『接吻、口吸い、口舐(ねぶ)り』など言葉が示すように唇のみへのキスが行われていたようです。
そもそも『キス』の語源はゴート語の『キュストゥス』(味わうの意)から来ているようです。フランス語の『ベーゼ』ラテン語「バシオ」(口を開くの意)から、日本語は「合吻」「口吻」「吸唇」などを経て尾崎紅葉森鴎外二葉亭四迷など明治の文豪らが「接吻」を使い始め、一般的に「接吻」が定着したのではというのが有力な説だそうです。
更に遡り、西沢爽『雑学艶学』によると、日本の文書にキスの記事が初めて登場したのは紀貫之土佐日記だったようです。
それには『押鮎の頭をしゃぶっていると、男と女が口を吸う様子に似てる。押鮎に心があれば、私は吸われていると思うに違いない。それにしても、早く都に帰って京女たちの口を吸いたいものだ』という意味のことが書かれているようです。紀貫之の『ボーッと』している姿を想像すると何だか滑稽ですが、土佐日記は成立が935年(承平5年)と言いますので、千年以上前から愛の行為として日本でもキスが行われていたと言えるようです。
 『最近いつキスしましたか?』と問われて、即答出来る方と、思わず眼球が上方を向く方といると思いますが、どうでしょうか?
残念ながら私は後者の方に成りつつあります・・・
「The Science of Kissing(邦題:キスの科学)」の著者であるシェリル・カシンバーム氏は著書の中で、ラトガーズ大学人類学者ヘレン・フィッシャー博士の研究内容を紹介し、「キスは人間にとって重要な三つのニーズを満たすために行われる行為」と説明しています。
一つ目は性衝動、二つ目はロマンス、最後が愛情だそうです。この三つが満たされることにより、人はパートナーと寄り添い愛し合うことができるとのことです。キスは、ふたりの関係を育むのにとても重要な役割を果たすと、カシンバーム氏は説明しています。
 しかし、その一方で、オールバニー大学心理学者ゴードン・ギャラップ博士の研究によると、59%の男性と66%の女性が、キスに関しての不具合によって恋愛関係を築けなかったと証言しているそうです。
私たちはキスによって、相手のDNAや生殖状態を探り、自分に合うパートナーを選別しているようです。キスでうまくいかなかったということは、すなわち生物学的に相性が合わなかったということなのです。
 私自身、この内容には非常に頷ける部分があり、未だ若かりし頃、とある女性と事に及ぼうとした時、キスをした瞬間に失礼な話なのですが、もどしそうになったことがありました。お酒を飲んでリバースした経験が無い私にとっては衝撃的な経験で、「君とのことはもっと大切にしたいから(汗)」などと誤魔化した記憶があります・・・当然、その後別れました。。。
 男性と女性ではKissの意味合いが多少違うようで、女性は自分と異なる遺伝暗号免疫系を持つ男性の『匂い』に強く引き寄せられるのだそうです。異なる遺伝子の結合は非常に生命力が強いそうで、本能的に女性はキスの最中に鼻を効かせオスの遺伝子情報をスキャニングしているのです。
一方、男性はどちらかと言えば、性的手段を得るためにキスをするようです。男性の唾液中には、テストステロンというホルモンが少量含まれており、これが女性の口に入ると、テストステロン濃度が上昇。女性の感受性や性欲が高まるのです。ですから男性にとってキスをすることが、性的関係を持つことに結び付きやすくなるのです。
ですから、アホな男性はキスしたから最後までOK!などと単純に考え、ほくそ笑んだりしていても、実はそれよりも早いスピードで女性に識別され、善し悪しを判断されてしまっているのです。
キスまで行ったのにそれ以上進もうとしたら拒まれたという経験を持つ男性諸氏は一次審査で落選したと考えなければならないのです。たかがキスされどキス・・・今日は飲みたい気分です・・・