東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

楽と快の違いで起こること(5)

そして「楽と快の違いを指導者自身が認識する必用がある」また、時代に即した操体の実践の重要性を説いて終わりにしました。
その後は三浦先生が操者、私が被験者役の実技です。実技前に師匠が「オレ、5分くらい喋っていいか?」と言われるので「どうぞ」と答えました。師匠はマイクを片手に会場内を歩き回り、鍼灸学校の学生さん達に向かって熱く語りかけていました。動かして感覚をききわけることの重要性、からだに優しい治療法、すなわち「きもちよさ」の効用などです。

なお、師匠が仙台で赤門に通っていた頃は、北海道には鍼灸学校がなく、北海道の方は皆仙台の赤門で免許を取得していたそうです。実は3日程前に北海道から電話をいただきました。北海道鍼灸師会副会長の大湊さんからでした。日本統合医療学会IMJ)北海道支部にもご縁が深い方なのですが、師匠と赤門で同級生だったそうで、支部会の資料に師匠の名を見つけ、連絡を下さったのです。
大湊さんは生憎仕事で支部会には欠席とのことでしたが、師匠とは電話で連絡がとれたとのこと。
入り口付近で、男性に「三浦先生はどちらですか」と聞かれたので「一番前に座っている髪の毛が長いヒトです」と答えました。男性は「昔は坊主だったんですよ」と、にやりと笑いました。この方も赤門の同級生だったのです。その他にも赤門出身の鍼灸の先生が何人もいらっしゃり、にわか同窓会になっていました。

この時点で既に10分経過(笑)。師匠にマイクを持たせるとこうなります。時間があればいいのですが、それでなくとも時間が一時間押しており、ヘタをすると飛行機に乗り遅れてしまいます(汗)。私は小声で「先生、飛行機乗れなくなっちゃいますよ」と合図を送りました。
というわけで、実技開始となりました。

会場の正面にベッドが一台置かれ「正面向いて腰掛けろ。上肢の伸展を第1分析、第2分析でやるぞ」

会場の参加者に見えやすいように、背面からの介助で、上肢を天井方向に挙上しての第1分析、第2分析、更に横伸展、前方伸展、後方伸展で第2分析の実技が終わりました。会場ではカメラを構えた参加者が大勢おり、私がきもちよさを味わっているところは激写されたに違いありません(笑)
普段、講習やセミナーなどでは、私達指導者はいくらきもちよさをききわけ、味わっていても、それに流されないように訓練しています。つまり、指導する立場にあるときは、無意識の動きなどはコントロールするようにしているのです。
まあ、今日は味わっているところをお見せしようと、思いっきりきもちよさを味わってみました。

勿論自分でも「自力自動の操体」はやりますが、やはりしっかりとした介助補助があると、安心してきもちよさをききわけ、味わうことができる状況は違います。
「今、どんな感じですか」と聞かれ「思い切りきもちよさを味わってしまいました。背中がすっきりしています」と答えた次第です。

ここで講演は終了ですが、質疑応答の時間が設けられました。ある女性は沖縄出身の保健師で、九州の某先生(橋本先生ともご縁があった産婦人科の先生)から操体を学んだということでした。彼女は20年前以上自分が学んだ操体と、今目の前で見たものが余りに違うので、驚いたようです。

彼女の質問は「今でも、膝を左右に倒してどちらがきもちいいですか?とか自力操体(自力操体という言葉は初めて聞いたような)でカエル運動とかやってるんですが、やってもいいんでしょうか」というものでした。師匠は「きもちいいんだったら、やっていいですよ」と答えました。
私は「どちらがきもちいいですか」という言葉が非常に気になったので、

  • 第1分析と第2分析は、動診の過程が全く違います
  • 第1分析(二者択一、楽をききわける)だったら「どちらが楽ですか、辛いですか」でも構いません
  • 第2分析(一極微、快をききわける)だったら「この動きに、きもちよさがききわけられますか?と問いかけます
  • きもちよさは二者択一ではわかりにくことが多いのです
  • 膝を左右傾倒させて『どちらがきもちいいですか』という問いかけをされるとおっしゃっていましたが、患者さんや受け手の方に『どちらがきもちいいかと聞かれても分からない』と言われ、困ったことはありませんか?

と、聞いたところ、彼女は眉毛を八の字にして「そうなんです」と答えました。やはり困っているのです。
どちらがきもちいいかと患者さんに聞いても「わからない」と言われるのが、操体を勉強する人の「お悩みNo.1」なのです。「どちらが」で始まったら「楽ですか、辛いですか(スムースですか)」と聞くのが道理なのです。きもちよさを問いかけるのだったら「この動きにきもちのよさがききわけられますか?」という問いかけになります。この区別が第1分析と第2分析の違いの最大のポイントです。
更に、橋本先生は「きもちよく動け」とは言われましたが、「きもちよさを探せ」とか「きもちよさを比較対照せよ」とは言われていないのです。

という補足をしました。この他、陽の時代、陰の時代についての質問や、貝原益軒の「養生訓」に出てくる「楽」という認識についての質問があり、私も非常に勉強になりました。

というわけで、時計を見ると飛行機ギリギリの時間です(汗)。ご挨拶もそこそこに会場を出ると、外はもの凄い雨でした。またもやウインドブレーカーをアタマから被って走り、何とかタクシーをつかまえ、ぎりぎりの快速エアポートで千歳空港に向かったのでした。

2011年秋季東京操体フォーラムは11月6日(日)、東京千駄ヶ谷津田ホールにて開催予定です。