東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

楽-温故知新

もう、今クールのブログでは数多くの実行委員のメンバーが書いているので今更な感じもしますが、私達、東京操体フォーラムでは臨床に対しては、操体黎明期の楽な動きへの問いかけでは無く、気持ちよさ・心地よさ、快適感覚を指針とした感覚のききわけを中心において臨床にあたっています。
この話をすると妙な勘違いをする方達がよくいらっしゃって、「そうですよねぇ、楽への問いかけでは駄目ですよねぇ!」「やっぱり快適感覚ですよね!」と鬼の首を取ったように「第一分析」を全否定する方がいるのですが、決して我々は第一分析が必要ない!いらない!何て一言も言っていないのです。
寧ろ、第一分析を知っているからこそ、第二・第三分析の凄さ、必要性が分かるのです。

このことを改めて思い知らされたのが、今年二回目の開催となった「SOTAI Forum in MADRID」でした。昨年の第一回目は初の海外開催であったので、レベルの確認をしつつお互い手探り状態での開催でした。殆ど指導と言うよりはエキシビション的要素の強い大会でした。
それが、今年は昨年参加されたヨーロッパ各地の指導者クラスの方達をはじめとして、初参加の方達が一つでも多く身に付けたい!本物を学びたいという、良い意味での緊張感があり、昨年とは全く違う雰囲気でした。

今年は昨年とは違って、操体の基礎を身に付けてもらうためのプログラムとなっていて、臨床家として、操体を学ぶ者として最低限身に付けていて欲しいものが組まれました。「般若身経」「足趾の操法」「ひかがみの触診」などです。
この時に感じたのが、日本でも同じですが、第一分析を行っているのに、第二分析を教えてくれとか、第三分析はどうするのかと、基本を飛び越して次を教えてくれと要求されるのです。国は違っても考えることは同じなんだなぁとつくずく思うのと同時に、基本の大切さをどう伝えていくかという重要性も改めて感じました。
これはどの世界でも同じなのですが、基本の上澄みに応用があり、基礎がない人間に応用はあり得ないのです。
野球をやったことのない人間に、いきなり150Kmのボールを投げることは出来ないのです。

「楽」をききわける第一分析を知っているから、次のステップもスムーズに移行出来、その良さも実感出来るのです。楽の限界、快の可能性は現場で実際にクライアントと向き合っていなければ実感は出来ないでしょう。机上の空論は所詮、机上でしかなく、現場は想像以上に厳しいのです。
私は今、プロとして操体を行っているわけですが、私の持っている武器が「第一分析」のみであったなら、とっくの昔に玉砕していたと思います。
逆に今はどの様な症状、状態であっても対応出来る武器を戴いた操体には本当に感謝しています。

知っててあえて使わないのと、知らないで使えないのとでは、同じ使わないでも天地の差があるのです。表面だけを見れば使わないから同じじゃないかと思いがちですが、見えない部分でも人として感じられる部分の厚みとなって必ず醸し出されて来るのです。それが、プロとアマチュア、弟子と師匠の違いだと思います。自信とは口で伝えるものでは無く、雰囲気としてその人から発せられる無言のオーラの様なものだからです。

だから、来年の4月の東京操体フォーラムでのイベントは初心に返り、あえて「第一分析」操体の基礎とでも言うべき部分をクローズアップし、行おうと思っています。
我々、東京操体フォーラムは真の「温故知新」を考えています。故きを温ねて新しきを知るとは、古きを捨てるわけでもなく、古きにしがみつくわけでもない、土台にしっかりとした下地を作りつつ、次代へ繋ぐものを作り上げていく、それこそが、我々の目指す誠の「温故知新」なのです。
4月を是非、お楽しみに。