東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私にとって操体とは(3)

操体だけではありませんが、医学とか手技療法の世界には、業界用語というものがあります。何故こういうものがあるのかと言うと、共通認識できる「記号」のようなものなのではないかと思います。

例えば、首の骨、頸椎は「C」と言います。また、頸椎は全部で7つあるので、頸椎1番はC1、2番はC2、みたいに言うわけです。胸椎は「T」です。全部で12個あるので、T1からT12というように表現します。腰椎は5つあり、「L」で示します。L1からL5まで。仙骨は「S」です。
これはわかるのですが、カルテにいちいち「頸椎1番が右方向に上方変位」と書くのは大変ですが、C1RSと書くのはそんなに手間がかからないし、他の先生とその患者の情報共有もできるし、何よりも記録に残しておくのは、からだの変化の貴重な情報にもなるからです。

私が最初に操体を習った先生は、K先生と言います。今、どちらにいるのか連絡が取れないのですが、非常に熱心な先生でした。

後で聞いたところ、三浦先生の初期の受講生の講習を受けたとのことで、仙台の温古堂にも行った事があるとのことでした。「生体の歪みを正す」をいつも携えていて、書き込みや付箋が沢山貼ってありました。
三浦先生の「生体の歪みを正す」もそのような感じですが、とにかく読み込んで読み込んだいう感じでした。三浦先生の治療も受けたことがあるそうで、「一体どんなことをやるのか」と、意気込んで行ったところ、きもちよくて寝てしまい、一体何だったのかわからなかった、とのことでした。まあ、盗もうとして行くなよ、という気もしないではないですが(笑)。

生体の歪みを正す オンデマンド版―橋本敬三論想集

生体の歪みを正す オンデマンド版―橋本敬三論想集

K先生の操体の講習は、カイロプラクティックや整体の生徒が多かったのですが、基本的にこの人達は「他力療法」の方々です。ここがずれているから矯正して、バランスを整える、という感じでしょうか。多分「操体」と言っても「矯正法の一種」だと思っていた方が多かったような気がします。私の友人は「足関節の背屈」を、相手役の人の足の甲に思い切り力をかけて「頑張って踏ん張って〜」と声をかけていました。私は「操体法治療室」を熟読していたので「なんだかなぁ」と思ったのを思い出します。多分「ボディの歪みをとることによって、愁訴を二次的に解消させる」という、操体の概念がまだよく伝わっていなかったのかも、と思います。

操体の授業のある時、50代後半のおじさんが、何かの動診の際に『先生、これはL4のPとどう関係あるんですか」(先生、これは腰椎4番の上方変位と関係あるんですか)と、聞いたところ、いつも割と温和なK先生が一瞬厳しい表情になり(私も「何だかとんちんかんな事を聞いてるなぁ、と思って聞いていました)、

「関係ありません」

と言いました。私はこれで、操体と、操体の言う「天然自然の法則」が少し分かったような気がしました。