東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私にとって操体とは・・・〜無意識とからだ〜

 私にとって操体とは・・・の五日目の今日は、操体を学ぶにつれて、無意識のついて考えるようになりました。操体を学ぶ前は、第三者の治療従事者がクライアントに対して治療をするということで、治療従事者側の意識について考えることはあっても、クライアントの意識や無意識について深く考えたことがありませんでした。それは第三者が治療従事者になるわけですから、からだの状態や反応・反射というように客観的に変化・評価ができる外観の状態に目がいくからだと思います。
 現代の医療では縦割りの治療になっていて、意識の問題は精神的問題とされ、精神科医や心理カウンセラーの治療となる傾向にあるのではないでしょうか。無意識に対してアプローチする方法はどうしているのでしょか。
 ユングが分析心理学で、「意識は膨大な未知の無意識領域の表層ないしは皮膚のようなものです」と言っているように、もっと意識の中心となる無意識について目を向けるべきではないかと思います。
 からだの動きにおいても、最近では無意識の動きについての報告がでてきているようです。ベンジャミン・リベット氏(「マインド・タイム 脳と意識の時間」ベンジャミン・リベット著 下條伸輔・訳 岩波書店から出版)は、脳に運動電位準備を図るための電極を取り付けた人に、「指を動かしたい」という気持ちになったときに動かしてもらい、意識が動かそうと意図する指令と、無意識に指の筋肉を動かそうとする準備指令のタイミングを比べたそうです。結果は、意図する指令の前に無意識下の運動準備電位のほうが先に起こるようです。運動準備電位が意図よりも早いということは、「動かそう」と意識するよりも前に無意識のスイッチが入り、脳内の活動が始まっているということを意味するそうです。
 意識により「手足を動かせ!」 → 大脳で手足を動かす準備 → 大脳運動野で手足を動かす指令 → 手足の筋肉 → 手足が動くという流れではなく、無意識に手足を動かす準備のインパルスが流れる → 意識により「手足を動かせ!」 → 大脳運動野で手足を動かす指令 → 手足の筋肉 → 手足が動くという順序が正しいということになります。
 無意識の活動がすべてのはじまりで、意識してからだが動く、感覚受容器から大脳で処理するにはどんなにトレーニングをしても0.5秒かかるそうです。無意識の動きがなければ0.5秒より早い物には対応できないどころか認識すらできないということになります。無意識に対してアプローチが可能であれば、からだへのインパルス伝達をより早くスムーズにすることが可能となり、野球のバッティングやパンチを避けるなどといった俊敏性のトレーニングにもなることが考えられます。
 操体法は、「無意識へのアプローチ」ともいえると思います。理由は明日紹介したいと思います。今日はこのあたりで・・・。ありがとうございました。