東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

心とからだの研究(六日目)

昨日の続き
操体の動診は感覚的、意識的にからだを動かすという独特の動きであり、その後に続く操法によってからだと心が自在に変化しうるもので、まさに妙療法としかいいようがない快へのボディランゲージである。こうした妙療法を通じて、一定の筋肉群が動かされ、活性化させられる。この動診では筋肉を活動状態においたまま快適感覚をききわけて、それに続く操法では最も快適な感覚時点において、一定時間、からだを静止する、いわゆる「たわめのマ」をもたせている。これは筋肉の振動を伴う静的な動作体系ができあがることになる。
このようなプロセスは、人間本来的な心身統合の姿へと導いていくことができる。動診の運動力学的な秘密を医学的分析によって考えてみると、すべての動診におけるからだの筋肉は、収縮させると同時にそれと拮抗する反対の筋肉を弛緩させる。たとえば動診で手首を屈曲させると、手の屈筋を収縮させて、反対に伸筋を弛緩させたことになる。同じようにすべての動診の動きは、それに関係する筋肉群を収縮させ、その反対の筋肉郡を弛緩させることを意識的に行うものである。
からだに起こるさまざまな症状・疾患というものは、不自然な緊張を筋肉に与え続けた結果にほかならない。こうした拮抗筋の無駄な緊張や過度の緊張が症状・疾患の原因となっている。先に述べたが、動診および操法にあっては筋肉の基礎張力を低下させることが可能である。特筆すべきは「たわめのマ」において疾患の原因となっている拮抗筋の緊張に限られた筋肉群だけを弛緩させることができるということだ。そして操法のクライマックスにおいて、全身脱力とともに筋肉が完全弛緩してしまうのである。したがって、動診・操法では医薬のなし得ないことでも、自然な方法で達成できるのである。
このように動診によって誘導された安心で完全な弛緩状態は生体エネルギーの莫大な節約をもたらし、そのエネルギーは治癒力への錬金作用に貢献する。これだけの効果が得られる動診ではあるが、ただ動かせばいいというものではない。からだのある部分を動かす場合、全身すべての筋肉、すべての関節を総動員しなければならない。そうすることで普段あまり使うことのない萎縮ぎみの筋肉にも血液がよく循環するようになり、いきいきと機能が回復してくる。これを「からだ全体で表現する」という言い方をしているのである。そして操法の「たわめのマ」に入ると、からだが静止した状態になり、ひいては神経系の全活動を鎮めるようになる。そうなると、体性神経だけに限らず、内蔵を支配する自律神経系も鎮まってくる。こうしてからだは活性化し、生体電気的なエネルギーで満たされ、情緒は安定し、心にも平安が訪れることになる。
明日に続く



三浦寛 操体人生46年の集大成 "Live ONLY-ONE 46th Anniversary"は2012年7月16日(海の日)に開催致します。