東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

感覚のききわけ

 最終日の7日目です。よろしくお願いします。
 からだの感覚のききわけが、治療手技・アプローチなどの盲点になっているということを書きました。第三者の治療従事者におまかせの治療アプローチでは、脊髄を介した反応である即効的効果が特徴とした傾向にあることが考えられますが、からだの感覚をききわけるということは、感覚を統合する大脳へと伝達され、そして錐体外路によって大脳・間脳・中脳・小脳・橋・延髄・脊髄に様々な反応を引き起こしてくるために遅効的効果が特徴になることが考えられます。
 からだの治癒能力を高める効果の感覚こそが「快適感覚」なのです。だからこそ第三者の治療従事者が治すことまで関与しなくても、からだが必要に応じた反応となるホルモン分泌によって、からだの治癒能力が高まります。
例えば、視床下部では本能の中枢ともされ、約5gの親指の先ほどの小さな脳ですが、人間の脳の中心にあって、保護調節をはじめ、食欲、性欲などの中枢とされています。この視床下部は、前群、中群、後群に分かれており、体内の恒常性を自動調節、自律神経の中枢があり、前群が抑圧性の副交感神経を担い、中群が自律神経の行動性の交感神経の中枢を担い、後群が体温調節を担っています。
 脳下垂体は後波・中葉・前葉に分けることができ、それぞれ分泌されるホロモンがことなります。後葉は、上部にある視床下部の一部が延びたもので、進化の過程で水中から陸上に進出し、体内の水分調節を必要とするために発達した脳の一部だそうです。中葉は、鼻とノドがつながる後鼻咽喉部にあったホルモン分泌器官が成長とともに、脳下垂体後葉に結合した脳であるということです。前葉は、全身のホルモン系を支配する部分であり、分泌されるホルモンは、全身の体調、体内の恒常性などを保つ働きをしており、成長ホルモン、性腺刺激ホルモンなど10種類程度あるそうです。快感と鎮痛をもたらすβエンドルフィンはここから分泌されます。
ホルモンとは内分泌腺から直接血管の中に微量に分泌され、血流を介して特定の器官や細胞(標的細胞)に至り、その働きを調節する生理活性物質です。
 代表的なホルモンを示すと、副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロンなど) 、甲状腺ホルモン、性ホルモン(テストステロン(男性ホルモン)、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン) 、副甲状腺ホルモン、 下垂体前葉ホルモン(成長ホルモン) 、下垂体後葉ホルモン(抗利尿ホルモン)、 膵ホルモン(インスリン、グルカゴン) 、消化管ホルモン(セクレチン、ガストリン)、 神経ホルモン(カテコールアミンなど)などがあります。
 視床下部の血流が増加することにより、自律神経、内分泌系、免疫系などを賊活化し、全身の諸疾患の予防、治療に効果が認められ、自然治癒力を高めることを報告している方もいます。「気持ちよさがからだを治してくれる」これは快適感覚により視床下部の働きをたかめ治癒能力とつながるのです。
 からだの感覚が鈍麻になると治癒能力が低下することが考えられ、感覚のききわけは第三者である治療従事者が介入できない領域であるからこそ、患者自身のからだのききわけが必要であり、快適感覚をききわけやすいように導く操体法を学ぶ我々が必要なのだと思います。(皮膚への接触方法がことなるだけでも、ホルモン分泌に変化が生じるのです。だからこそ操体法は簡単に見えて実は奥が深いのです)
 一週間お付き合いありがとうございました。