東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

病気と自己責任(最終日)

昨日の続き

 我々人間は加熱調理したものを食べているが、健康のためには、食の工夫も必要である。火食すると、食物の持っているビタミン、ミネラル、酵素が死んでしまう。それらが死んで効果がなくなるだけならまだいいが、毒性に変化するものもある。特にほうれん草の場合は、生で食べてこそ、生きた蓚酸が働いて、からだのためになるが、一度煮てしまうと、死んだ蓚酸に変わって、からだにとっては毒になってしまう。神経痛、リウマチ、胆嚢結石、便秘、頭痛など、煮炊きされた蓚酸が原因で起こることがわかっている。

 しかし今さら全部を生で食べるわけにもいかないし、また人間の頭脳がこれほどまでに発達したのも、加熱調理したものを食べたからでもある。そこで加熱調理に関して最も優れている中華式料理法を学ぶべきである。どんな野菜であっても高温の油で炒めてさっとアンをかけ、短時間の加熱で調理することができる実にすばらしい中国の伝統文化である。植物性油で、短時間、そしてアンをかけるという三拍子が揃うと、消化率がうんとアップする。しかもビタミン、ミネラル、酵素が油とアンに包まれて破壊されることなく腸まで届いてくれる。これをするにはやはり中華鍋を使わないといけない。

 また生野菜や果物を食するのに、鳥類や四ツ足動物ならば何の問題もないが、直立二足歩行をする人間ではからだを冷やしてしまうことになる。それは免疫力を下げることにもつながる。そこで生野菜や果物を食べるときは、醤油を少しつけてから食べるようにしたい。生野菜や果物はからだを冷やす害があるので、からだを温める作用のある塩を少しつけることで緩和できるが、それでは血液の塩分濃度が濃くなって血圧の上昇が心配になる。ならば塩分の害を弱めてくれるアミノ酸共存している醤油が最もよいということになる。この醤油というのは日本人が生んだ食の最高傑作だといってもよい。

 ほかに動物性脂肪の料理については、その害を減らすために、植物性の酸である、ゆず、すだち、レモンなどを肉や魚を食べるときは、必ずこれらをかけるとよい。焦げた焼魚の発がん性をおさえる効果もあるそうだ。
ここで肉食の誤解を説いておきたい。すでに指摘されていることであるが、脳卒中の発症率が高い理由の一つは、動物性食品の摂取が少ないためだと言われている。どういうことかと言うと、動物性蛋白質が不足すると、コレステロールが少なくなり、脳出血や脳深部の細い動脈に起こる脳梗塞を起こしやすくなるということが専門家にはよく知られている。肉に含まれる鉄分やセロトニンは、脳内で重要な働きをしており、肉食は高齢になっても重要な意味を持っている。

 民間素人医学でよく言われるように「肉と砂糖はカラダに悪い」と短絡的に切り捨てるのは、浅はかな考え方である。それよりも肉類の摂りすぎと脂肪分を減らす、いわば低カロリー、高蛋白になるように工夫することで、肉類はまことに良質な蛋白源になるのである。

 また食の健康について耳よりな話としては、野菜の最もよい摂り方であるが、生野菜でも、加熱調理した野菜でもなく、糠の漬け物である。ただし、かぼちゃだけはどういうわけか糠漬けには適さない。糠漬けは発酵食品であり、糠の中で乳酸菌が活動してビタミンCを作りだすので、その糠漬けを食べていると、ことさら添加物入りで割高な乳酸菌飲料を飲む必要はなくなる。

 そしてその食を燃やすために必要な人間の呼吸については、特に注意しなければならないことが多い。呼吸は現代人の文化生活において、ストレスの影響を受けて常にイライラすることばかりである。これは精神不安定な状態にあり、肉体的な病気とは一線を引かなければならない。いわば精神疾患である。そしてその精神疾患は感情に直結しているが、感情は自律神経が支配しており、この自律神経に影響を与え続けているのが呼吸である。だからといって呼吸法なるもののみでストレスが解消されるということはまずない。呼吸は身心の状態に応じて自在な呼吸が自律的になされており、どの呼吸がいちばんよいというものではなくて、時と状況に応じた自然な呼吸ができることこそ理想の呼吸だと言える。

 私は呼吸の専門家であるが、あえて呼吸のハウツーについては述べないことにする、ただ言えることは、意識からアプローチすることで呼吸の問題は片付くものと思ってよい。それは想念やイメージといった内在の意識操作から導かれた自然な呼吸において、精神に重要な役割を果たしてくれることになる。

 一週間にわたって、自分のからだについて他人任せにすることができない自己責任というものを考えてきた。病気に直接影響を及ぼす自己責任として従来から言われている「息・食・動・想」と、それに加えて操体スーパー・バイザー三浦寛師の持論発案による「皮膚」への働きかけというものがある。しかし、あまり熱心にそればかりを実践していると行きづまってくることになる。そんなときは原点である日常の起居動作に心をこめて、自然なからだの動きに身を委ね、任せることで、からだの奥にあるイノチの営みを見つめることができるだろう。病気にも健康にもあまり過剰な意識は持たないようにしたいものである。

 明日からは瀧澤実行委員の担当です。

2013年4月28日 東京千駄ヶ谷津田ホーにて、春季東京操体フォーラムを開催致します。