もう一人、このようなバランス感覚の持ち主を挙げるとするならば
東天の獅子(夢枕獏著)に登場する、嘉納治五郎先生です。

- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 102回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
嘉納先生は実在した人物で(1860〜1938)、明治期に柔道を創始されました。
この小説の中では、いかに柔道を創始し、発展させていったかが
その他の登場人物も含め、熱っぽく語られています。
本格的に柔道を学んだことはないですが、武道、格闘技に
いそしんでいた時期もありまして(あまちゃんでしたが)、この手の話しは大好物なのです。
その中で嘉納先生のバランス感覚を良くあらわしている一節を挙げます。
「知的好奇心−
これは、嘉納治五郎という人間を読み解いてゆく時に、重要なキーワード
となるだろう。もうひとつには、天性とも言うべきバランス感覚がある。
あることに偏ろうとしないこと。(中略)和と洋。東と西。幼少時より、
漢書を学びながら、それと並行して英語を学んでいる。精神と肉体。
文と武。日本の最高学府の最新の教育を受けながら、日本古来の柔術を
学ぶ感性。」
そして、その感性を持って、
「柔術の技術、奥義、これを“理”をもって読み解いてゆき、自らの肉体を
実験台として、古流の技を体系だてていったものが、柔道の技となって
いったのである。」
うーん、このあたりが橋本先生と重なってきます。
対になるものを調和させる能力、根底に流れる原理を発見する能力、
そしてその原動力が知的好奇心(野次馬根性)…
自発的パターンによる情報収集、インプットにとどめることなく、
アウトプットまで持っていく。
つまりリテラシーが相当高かったことは想像に難くないと思います。
橋本先生は明治30年生まれ。その時嘉納先生は39歳。
東洋の文化に西洋の文化が流れ込んできた明治という大転換期に
このような偉人達を輩出した事実は興味深いですね。
明日につづきます。