東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

〜心魅かれるスタイル、それは生き方2〜

人間切羽詰った状態になると、冷静さを欠いて
どう行動したら良いか、わからなくなったりするものです。
ましてや、今まで勉強してきたことが、臨床で通用しない…
冷や汗かくわ、胃はキリキリするわと散々味わってきましたが、
当時の橋本先生はどうだったのでしょうか。

著書には「私のような医者に見切りをつけた患者たちの動きを眺めていると、
相当に非医者たる民間治療師や漢方医に流れていることがわかって、
私は貧弱な現代医療に何かプラスするものがあるかもしれないと触手を
伸ばしてみ始めたんです。」と書かれています。

悲観的な状況において、そこから光明を見出すような物事の捉え方。
藁をも掴む思いだったでしょうが、世間の動きに着目し、即行動。
しかも、えらぶることなく、非医者的立場の民間療法師から素直に
教えを請う…

現在においても、手技療法や民間療法に懐疑的な医師はけっこう
いらっしゃるくらいですから、当時の橋本先生の一連の行動を
支えた精神的バランス感覚には驚かされます。

たらればを言ってもしょうがないですが、もしもこの時、
民間療法に目を向けず、現代医学のみで奮闘されていたら
操体は誕生していなかったかもしれません(汗)

さらに、現代医療とは違う医療体系を持つ民間療法を研究され、そこから
東西医学の架け橋ともなる運動系に着目され、症状が改善されるのは
「運動系の歪みの是正である」という原理原則を発見されました。

藁をも掴む思いで、自分を救うほどのものを掴めた時、
強烈なインパクトで傾倒し過ぎてしまうこともありますが、
橋本先生は医者という立場、現代医学的な捉え方を持ち合わせたまま
うまく民間医療(東洋医学)を取り入れ、エッセンスを抽出し、操体に昇華されました。

どちらかに固執することなく、上手くバランスをとりながら、新たなものを
創造された姿は、あたかも左右の翼を大きくはばたかせて空を舞う
鳥のようです。片方だけでは飛べませんからね。
このあたりのバランス感覚がとても素敵だなと感じるんです。

東と西や右と左などなど、とかく優劣をつけがちな世の中ですが
このような精神は是非持ち合わせていたいものです。

明日につづきます。