おはようございます。
あっ 今日は新しい年のはじまりでしたね。
新年あけまして
おめでとうございます
今年も東京操体フォーラム実行委員ブログを
どうぞよろしくお願いいたします。
お正月といえば、おせちにお雑煮、初詣、それからお年玉。
経営の神様とまで崇められた松下幸之助氏は、お正月に社員の人達に対して「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」という標語を、お年玉として贈った事があったという。松下氏の著書『人生談義』では、五十一年前のお年玉と題して、51年前を振り返りながら、何事でもコツをつかむことの大切さや、その意義、そしてコツをつかむにはどうすればよいのかということが書かれている。
コツをつかむにはどうすればよいのか、という事に関して、要点と思われる箇所を抜き出してみると・・・
1、
「ぼくは、ものごとのコツというものは、単に人から教えられたり本を読んだりしてわかるというものではなく、みずから悟るというか、自得するものだと考えています。」
2、
「どんなことを行う場合でも一所懸命取り組んで、その都度これはうまくいったなとか、これはここをこうすればもっとよかったという具合に反省を重ね、新たなやり方を工夫していく。そのようなことを繰り返していくうちに、そのコツがおのずと身についてくるということではないかと思います。」
3、
「ものごとのコツをつかむコツは素直な心になることであるといえるのではないでしょうか」
この題目の文章の中では、自然の理という言葉はでこないが、昨日のブログで紹介した根源社へ祈りをささげている時の心境、意識である「自分が何ものにもとらわれない素直な心で、自然の理に従っているかどうかを反省しているのや」という言葉を2と3の中に重ね合わせて考えても良いと思う。
そうすると、操体法の中でも、最も重要な身体運動の法則を説いた、般若身経への取り組み方が思い浮かんでくる。
般若身経は、健康体操のようなものと捉えられてしまっている面があるが、健康体操ではない。般若身経からはじまる身体運動の法則には、健康の基を正し、自然体(健康体)としての、あるべき姿を問いかけ、それが成り立つ理と約束ごとが示されている。
だから、単に人から教えられたり本を読んだりしてわかるというものではなく、本人自らからだを使って、動かし、感覚をききわけながら悟るというか、自得していくものだと思う。その際注意しなければならないのが、自分の持論の眼中で解釈しようとしないこと。それをしてしまうと身経の意を成さなくなり、当然、何の効果も上がらなくなってしまう。快・不快の原始感覚を研ぎ澄まし、自然の理が成り立つ約束ごとを体感することが重要であり、それを体感することで、より自然体(健康体)へと近づいていくということなのだ。
操体法の創始者、橋本敬三先生は、武芸諸般、茶道、華道などの名人達人、あるいは一般の人でも、外観上のフォームも麗しく見え、且つからだをより能率的に使うコツを会得している人に共通した道理を解明した。それは、自然環境に適応することであり、より良く適応している程、全身の重力をからだの中心に近づけて、からだを使えているという事。
自然環境に適応するには、その法則に従うという事。自然法則の解明の為には、あらゆる方面からの検証がなされと思う。そして、事が自然法則の解明なだけに、自然の理に従っているかどうかを、素直な心で、自分を超えて自分を生かしめている大いなる自在に、問いかけることも忘れてはいなかったと思う。
そうして、からだの使い方の自然法則である、手を使う場合は小指側側を利かして使う、足の場合は親趾側側を利かせて使うという重心安定の法則の解明が成された。重心が安定することによって、からだの使い方のバランス制御が保たれるわけであって、これによって文字通り腰を要とした、からだの使い方が可能となってくるということ。
しかし、事はそれだけでは終わらない。からだの使い方の自然法則も、ある程度コツを会得している人ならば、成る程とすぐに納得していただけると思う。しかし、大部分の人達、特に臨床の場で出会う健康傾斜の歪体化の進んだ人達には、それだけでは納得していただけないのが実情だ。もっとその奥にあることまで解明していかなければならない。つまり自然法則の究明だ。そうしなければ、コツが会得した人達だけのもので、終わってしまうのだ。
橋本先生は、この自然法則の解明と究明に生涯をささげていたと聞く。その成さんとしたことの真意とは、限られた人達だけではなく、すべての人達がやればやっただけ良くなる、より自然体(健康体)に近づくことができるという、いわゆる名人達人はたまた理想像とする絶対完全健康正体に、共通する健康のコツを得るためのコツまでをも、明らかにしていくという事だったと思う。
しかし、橋本先生の御存命中、それは完成されたかたちでは、適わなかった。橋本先生の中では、それは出来上がっていたのかもしれないが、公表するまでには至らなかった。いかんせん検証する時間と身が持たなかったのだと思う。人間には寿命があるのだ。さぞや無念だったろうと思う。しかし幸いにも、その意志は、高弟、三浦寛先生にきちんと受け継がれた。
重心安定の法則に限っただけでも、三浦先生によって、更なる検証と法則の奥にあるものの究明がなされ、より良くなる為のコツが明らかにされてきた。
般若身経は基本的には立位で行うが、重心安定の法則に則った立位の姿勢を意識して行わなければ、自然体(健康体)に近づこうという取り組みにはつながっていかない。
橋本先生は「からだの使い方は、かえだの中心である腰に集約されるべきが理想である。腰を要として、からだを使うコツは重心が母趾の足底、つまり、母趾のつけ根の部分(足心)にかかる」と述べていたという。この条件を満たすには、「両足を腰幅に開き「つま先と踵を平行させ」「両膝の力を抜いて緩め」など、いくつかの条件に従わないと、そのようにはならない。コツを活かすコツということ。
コツのコツ、ここでいう重心安定の法則に則った立位の姿勢がとれる条件、つまり法則の奥にあるものの究明は、橋本先生から三浦先生に、その意志が引き継がれたことで完成の域に達した。しかし、そのいくつかある条件も、般若身経を行う本人が、どこまで意識して行え、その感覚をフィードバックできるかで、その効果の程は変わってくる。健康体操の類のように、法則も意識しなければ、その感覚もききわけないというのとは根本的に違う。
そこで大切になってくるコツが松下氏の言う「ものごとのコツをつかむコツは素直な心になることであるといえるのではないでしょうか」ということだと思う。
今年もコツコツ精進していきましょう。