東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

歪み④

昨日のつづき

 

 からだに歪みのある人は、必ず中心軸がずれている。 からだの中心軸とは、頭蓋、頸椎、胸椎、腰椎、骨盤の各パーツを通る軸のことで、本来はそれらが一体でなければならないのに、その軸がずれることによって、筋肉のどこかに凝りができる。 すると、脳脊髄から末端に至るまでの全神経のどこかに渋滞が起こってくるのだ。 それらは背骨の異常が万病の原因になることでもよく知られているところだ。

 

 たとえば、からだにかかる重力を背骨で軽減できずに、腰や膝にその負担がかかってしまったり、呼吸が浅くなったり、猫背になって内臓を圧迫してしまったり、椎間板に歪んだ圧力がかかり、神経を圧迫したり、・・・・・・数えればきりがない。 一般的に言って、前傾姿勢である猫背タイプの人は、常に内臓が圧迫されており、内臓疾患が懸念される。 また、腹を突き出して腰を反らせているのは典型的な肥満タイプである。

 

 これらの背骨の異常の原因を世間では、筋力の低下であると考えられている。 「筋力が弱くなることで背骨の湾曲は大きくなり、脊柱起立筋の弱さが背骨の歪曲を助長し、その奥にある腸腰筋などがその歪曲をさらに悪化させてしまうことになる。 そしてそのような背骨の湾曲が過度になると、腹筋や脊柱起立筋、それに骨盤の筋肉や、下肢の筋肉まで影響を及ぼす」 としている。 確かにそうかも知れない。 だからといって、筋トレなどで筋力アップしただけで、果たして解決することになるのだろうか。 私にはいささか疑問が残る。

 

 昔、カイロプラクティックのスクールに通っていた頃、 「筋肉には平滑筋と横紋筋があり、平滑筋は内臓などの壁をつくる不随意筋で、疲れることなく動きつづけられる筋肉であり、常に休むことがない。 一方の横紋筋は骨格を動かす働きをする随意筋であるが、使い続けると疲れてしまう筋肉である」 と、習った記憶がある。 

 

 ところで、心筋や腹筋は横紋筋なので、脊柱起立筋と同様、疲れや凝りや痛みが出てもよさそうなものだが、心筋や腹筋にはそうした現象が、ほとんど起こらず、横紋筋でありながら疲れを知らない筋肉である。 他にも肛門括約筋や瞼の筋肉も疲れを知らず、老化が起こりにくい横紋筋であると言われている。

 

 ここで注目すべき横紋筋として、「腹筋」がある。 この腹筋が凝ったり、筋肉痛を起こしたりすることが殆どないのは、直立二足姿勢を維持するため育んできた筋肉であるからだ。 しかし、もし腹筋ではなく、背中の筋肉に頼っていたとしたらどうだろう。 そんなことをしたら、どうしても腰の筋肉を酷使してしまうことになる。 すると腰の筋肉が硬くなり血流が低下し、代謝も下がってしまう。 そして老廃物が筋肉に蓄積して筋肉痛を起こしてしまうようになるのだ。 

 

 実はこれこそが腰痛の正体なのである。 背中や腰の筋肉は使い続けると疲れてしまう筋肉なので、そのうち姿勢が悪くなる。 ということは、腹筋を使った立ち方をしておかないと、日々の筋トレにおいて、老化と徹底的に抗戦しない限り、年齢とともに姿勢は必ず崩れることになるだろう。

 

明日につづく