東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私のズッコケ操体クロニクル ➀

 私が操体と縁ができたことについては、大した意味があるわけでもない。 それまでの私のワークはヨーガと精神療法を生業としていた。 原初療法やブリージング・セラピーといったサイコ・セラピーのオフィスを神戸市内で開いていた。 こういったところにやって来るクライエントというのは大抵、誕生以来のバーストラウマのような問題を持ち抱えているものだ。 それに対応していくというのは、それなりの忍耐というものが必要である。

 

 しかし、私自身がベストコンディションでない時はとても疲労感に襲われる。 そんな状態が続くとクライエントに対して感応することが難しくなり、いつの間にかマニュアル反応するようになってしまう。 そんなとき、不動産屋の友人から 「そんな面倒くさい精神世界から早く足を洗ったらどうだ 同じやるなら精神を相手にするより、ボディを相手にしたほうがよっぽど気楽にやれると思うぞ!!」 と、軽く言われた。 私も 「それもそうだな」 と、軽い気持ちで返答した。 だがしかし、その軽く答えたはずが、だんだんとその気持ちが重くなってきた。

 

 それなら、よし ボディをメインにしよう!! そう決めた私は早速、ボディワークスクールの資料を集め、カイロプラクター養成所に入門し、2年間、カイロプラクティックの手技を学ぶことになったのである。 カイロを学ぶ傍らでインド正統派ヨーガの指導もこなしていた。 健康ヨガや美容ヨガ、○○ヨガというものと一線を画した本来目的である瞑想に主眼をおいた調息法をメインに指導したことで、本物志向の受講者からはとても受けが良かった。

 

 そして、カイロプラクターとして開業することになったのであるが、それは自分自身に納得のいくものではなかった。 というのも、カイロプラクティックは骨格の矯正を行う手技療法で矯正後は確かに改善されてはいる。 ただ、2~3日後、早ければ翌日、極端な例では矯正して帰宅後に元の矯正前に戻ってしまう場合もあった。

 

 この時、疑問に思ったことは、施術前と施術後では確実に骨格変異が改善されているのである。 また筋肉においても十分なマニプレーションを施しているにもかかわらず戻るのは何故なのか? この時期、大いに悩んだ。 ところがチャンスというのは訪れるものだ。 2年間のカイロ養成所を終えた後もスポーツトレーナ科や物療技術士科のコースを週に1~2回のペースで受講していたことが操体の出会いにつながっていくのである。 

 

 そういった講義の中で操体法(初期の操体法)も学んだ。 それがきっかけとなって当院において骨格が矯正前に戻った患者に、カイロ手技を再矯正した後に操体法の施術を試みた。 するとどうだろう、元に戻ってしまったという訴えがほぼ無くなったのである。 これはひょっとしたらひょっとするぞ!! と思った。 

 

 それから書店に行き、操体法関連の本を物色していた。 そして目に止まったのが 「哲学する操体 快からのメッセージ」 であった。 立ち読みすること30分、そうか、「快適感覚」 がキーワードだったのか その本を買い、その日のうちに読み終えた私は、以前知り得たある記憶がよみがえってきた。 

 

 それはホリスティック医学のセラピューティックタッチの概念である。 特にアメリカの看護師たちの間に広く浸透していたヒーリングテクニックであり、脳波の修正や慢性痛に苦しむ患者の症状の緩和を可能にしているものだ。 この本の著者である三浦寛師は皮膚操法という言葉で表現されていた。 日本国内においてもこのような研究者がいるのなら是非お会いしなければならないと思った。