東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

息を吐く

 吐息とは、仏道用語である。普通「呼息」というのを吐息と表現するのは「吐」は嘔吐の文字が示しているように邪物を吐くという意味がある。息を吐くと、全身の筋肉が一気にゆるむ。筋肉に付着している凝りが吐き出される。病気の素因は、筋肉の凝りにあるから、それが吐息によって消えていくとすれば、毒という邪物を吐き出したと見做してもいいのではないだろうか。心の状態と呼吸の形とは、まったく同じだから筋肉がゆるめば、必ず心がくつろぐものである。
 息を吸うのはやや難しいが、吐くのはやさしい。そのやさしい吐く息に乗じて十分に吐くと、凝っている筋肉がゆるむ。筋肉がゆるむと、心の過剰緊張がとれる。吐息はやさしいながらもからだと心の両方にわたって、すばらしい効果を出すことができる。
 頸が緊張し続けると、あくびが出る。肩が緊張し続けると、ため息が出る。昼間緊張し続けると、いびきが出る。これらはみな吐息の変形であり、自然は常に過剰緊張を緩和して健康を護ろうとして余念がない。
 動物は笑わないが、人間だけが笑うことを覚えたのは、人間は緊張しすぎるから笑うことによって、全身をくつろがせるわけである。母音の「ア」音が最高に横隔膜を動かして肺活力をつくるからア音で笑うことを勧める。ただし、ひとりで笑っていると頭にきていると思われてもいけないから場所を考えられたい。
 また、歌うのも、お経をあげるのも、気合いをかけるのも、みな吐息の恩恵にあやかれる。仕事をしている時、運転している時、便所にいる時、時を選ばず、所を嫌わず、深い吐息をすることで積りやすい生活の凝りが刻々に解消することを請け合う。