東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

呼吸のリズム

 心と呼吸とは、非常に深く関係づけられている。
 怒っている時には、呼吸のリズムはいつもと違っている。性的に刺激されている時も呼吸のリズムは異なる。沈黙している時も、幸福な時も、悲しんでいる時も呼吸のリズムは異なる。呼吸は、心の気分とともに変化しつづける。そして、逆もまた同様にあてはまる。呼吸が変化する時には、心の気分も変化し、呼吸が止まる時には、心も止まる。
 息というのは非常に抑制的に使えるものである。というのも息が律動するごとに、ある特定の気分が心に湧き上がってくるが、他の気分が消え去ったわけではない。ただ、隠れただけである。
怒りたければ、怒りが生じるようなリズムで呼吸をすれば怒りがやってくる。俳優はそれをやっていて、怒りを表現したい時には呼吸のリズムを変えるのである。その呼吸のリズムは、ちょうど怒っている時と同じにしなければならない。呼吸のリズムを速めることによって怒りを感じ始めるのであって心の中にある怒りの部分が出てくるのである。
 また、呼吸のリズムは心の中のどんなものでも抑圧するために使うことができる。心の中のものは何でも抑えつけられる。たとえば、自分にくつろいでいる人は、同じリズムの呼吸を続けることができる。このように、呼吸リズムを標識として用いることができる。しかし、その呼吸リズムは決して心のせいでは変わらない。呼吸から変わるのはよくない、不自然である。変化はまず、心から生じるのが自然である。つまり、まず、心が変わり、その結果として息が変わるのである。
 タントラというのをご存知であろうか? タントラとは、インド密教のことである。タントラでは実に多くの呼吸リズムを秘儀として使っており、SEXすらも瞑想として許している。が、タントラが許すのはSEXの際に呼吸が一定である時だけである。さもなければ許しはしない。もし、心が巻き込まれたなら、呼吸のリズムは同じままではいられない。またもし、呼吸のリズムが同じままなら、心は少しも巻き込まれることはない。SEXのような深い生物的なものにさえ心が巻き込まれないとしたら、ほかのどんなものにでも巻き込まれることはない。と、タントラは教える。