今週の担当は兵庫県の三田市から送信しています。
今回はリバーシングという呼吸法にふれてみたい。
リバーシングとは再誕生。米国の精神科医レオナード・オルによって発見された呼吸法である。あるとき、彼はバスルームでシャワーを浴びているときに、床に落ちていた石鹸に気づかず、その上に足をのせて転んでしまった。あまりの勢いのせいか、手をつく間もなく仰向けに全身を強打してしまった。一瞬にして呼吸は止まり、意識あるものの身動きとれない状態に陥った。息を吸おうとするも吸うことができない。そして全身の緊張が極限にきたとき、本能的な全身の弛緩とともに息を吐いていた。すると、その後に僅かではあるがこれも本能的に息を吸っている。彼はこれに賭けた、ひたすら息を吐くことに意識を集中した。少しずつではあるが息を吸っているのが肉感として感じられる。生への執着も手伝って、ひたすら呼吸することにだけ集中し全身全霊を傾けている。このとき、意識の変化を感じ始めていた。自分の記憶が遡っていくのだ、表層意識にはない1〜2歳の頃の記憶がはっきりと意識上に現れてきた。彼はまるで何かに導かれているかのように深くて速い呼吸をリズミカルに力強く続けていたのである。そしてその時はやってきた、呼吸困難を感じ、呼吸は乱れて激しくなり、ときとして呼吸はまったく止まってしまう。身体は麻痺し、死につつあると感じていた、それはまさに子宮から出てきたときに感じたことであった。彼は恐怖心から通常の呼吸に戻していった。この強烈な体験が彼を呼吸の研究に向かわせたのであった。その後の彼は精神学科の教授でもあったことから自分の学生らに何度も実験を重ね、療法として体系づけられたものが今日のリバーシングという精神療法としての呼吸法を確立したのである。
そのリバーシングとは自分の誕生を想い出すことができ、再びその誕生を経験させてくれる。バース・トラウマという出産時に受ける肉体的、精神的ショックから解放されることによって、潜在意識の中にある誕生時の原初的な苦痛を快へと変質させられる。バース・トラウマは出産時に関係した産科医や助産師たちが、赤ん坊が何を必要としているかを知らず、逆に必要でないものを与えたことによってできた傷である。
出産時における強烈なライトは医師には大変便利であっても、赤ん坊のような敏感な眼にはまぶしすぎるし、まわりでたてる大きな音や声は赤ん坊には騒がしすぎる。また目の粗い布や、荒々しい触り方はデリケートな肌には耐えられない。このようなしうちは赤ん坊にとってひどい苦しみである。それでもまだ肉体的な苦痛は精神的な苦痛と比べると問題にならない。
また、子宮から出たばかりの赤ん坊はヘソの緒をとおして呼吸しているのだが、それをすぐに切り取ってしまう。かわいそうな赤ん坊は窒息して死んでいくようなパニックに陥るのである。そしてはじめて肺に空気が送り込まれるのであるが、それは熱い空気が肺を焼き尽くすような苦痛であると言われている。このような暴力で迎えられるという恐ろしい出生体験のあと、さらにぎゃあぎゃあ泣きわめく見知らぬ連中とともに新生児室に放置され、にせの食物を与えられることになる。
明日につづく