私達のからだは「気持ちの良い」という感覚を味わうことで、筋肉・骨格の歪みが取れて生体の歪みが正されるということは先日書いた通りですが、では何故「気持ち良い」という感覚を味わうだけでからだの歪みが矯正されるのでしょう?実際に他の手技療法を用いてもからだの歪みは矯正されるのですが、その為にはそれなりの医学的知識や技術そしてそれなりの労力が必要になります。しかし実際に操体の臨床ではからだのある一点の皮膚に軽く触れておいて、その皮膚感覚による気持ちの良さを味わっているだけで全身の緊張が緩みからだのバランスが取れて来ることは良くあることです。
橋本先生はその著書の中で
つらい動きを我慢してやる必要はありません。なぜか。みなさんは用たしに外出するのと、お宅に帰るときとどっちが気持ちよいですか。家に帰るときの方が良いでしょう。もとにもどることは気持ちがいいのです。もとのからだはもともとよいのです。気持ちよく動くともとにもどるように人のからだはできているのです。こんなありがたいことはないでしょう。これが自然の法則なのです。
- 作者: 橋本敬三
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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と気持ちよさでからだが治ることは私達が本来持った能力であると書いておられます。なにも操体法が特別なことをやっているのではなく、からだが本来もっている能力に従って臨床を行っているだけなのです。あくまでも治しているのは患者自身のからだであって、私達治療者は患者さんのからだが気持ち良さをききわけ味わってもらえるようにナビゲートしている存在に過ぎないのです。からだの持っている自然治癒能力というのは本当に有り難いものです。しかし残念ながらこの有り難い能力を誰もが皆享受出来ているかと言えば必ずしもYESとは言えないようです。それは我が国の34兆円を超える医療費を見てもわかるように病気や怪我により医療機関を受診し治療を受けているのです。実際に「気持ちよく動けばからだが治るんだよ〜。」と言っても「えぇ〜っ、本当ですか〜?」と疑問をもたれる方が大半を占めていることは、実際の現場でも痛い程感じます。考えてみると私達の普段の生活の中で『気持ちよい』と感じる瞬間というのが一体どのくらいあるのでしょうか。気持ちが良いと感じる為には、自分自身のからだと対話しなければなりません。それぞれが自分自身のからだにききわけるという過程を経て初めて気持ち良いという感覚を味わうことが出来るのですから、『気持ち良さってどんな感じ?』という疑問を持つということ自体が、自分自身のからだと上手くコミュニケーションが取れていないということなのかもしれません。あなたは上手にからだとコミュニケーションがとれていますか?
気持ち良さとは原始感覚なり
■2011年秋季東京操体フォーラムは11月6日(日)、東京千駄ヶ谷津田ホールにて開催予定です。