東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

体験その2

 最終日の七日目にして、平成23年最終日です。よろしくお願いします。
 昨日の続きですが、手術後の痛み対して僕自身がどのように対処・対応したのかについて書きたいと思います。手術後のからだは痛みによって、身体運動の法則(重心安定の法則・重心移動の法則・連動の法則・呼吸との相関性・目線との相関性の3法則と2相関性)から逸脱した動きになっていたとしても、身体運動の法則に対する学びが活かされてくるから不思議です。
 痛みを我慢する場合、皆さんはどうしますか。痛みを我慢する場合は、歯を喰い縛ると思いますが、どうでしょうか。歯を食いしばると、下顎を引き込み奥歯の咬み合わせによって、チカラを入りやすくして痛みを我慢する形を作ります。この時、頸椎は前屈し、肩甲骨は外転し、上肢は内旋、体幹は前屈へという連動が起こります(いわゆる猫背のような姿勢を今回のブログでは屈曲パターンとします)。実際に僕だけでなく、入院されていた周りの痛みを我慢している方々もこのような姿勢でした。
 ですが!ここが不思議なところですが、痛みを我慢するとき、屈曲パターンで我慢しているにも関わらず、お尻を突っつかれると(更なる刺激をされと)、逆の反り返る伸展パターンに一瞬にして変化させ逃避(逃避反応)するのです。痛みを我慢しているのと、痛みから逃避する連動は違うということなのです。また、「楽」な動きを確認すると、我慢している形の屈曲の動きのほうが動きやすいようです。
 僕が痛みを我慢している間に行っていたことは、逃避反応の動きを参考に、口を開くと頸椎が伸展してくる連動を利用して、身体運動の法則に基づき全身の連動を引き出し、さらに頭の皮膚(耳の周囲や顎関節の皮膚)で動きを誘導しながら、動きと皮膚の「快」とききわけ、ききわけた快適感覚を味わっていたのです。頭の皮膚感覚は、痛みの感覚より、皮膚への感覚のききわけに集中できるから不思議なんです。   
 頭の皮膚へアプローチすると、痛みや感覚を認知する大脳皮質にダイレクトに認知されやすいためか、痛みという不快な感覚があっても、痛みを忘れ「快」をききわけやすく、十分に質の高いきもちよさを味わうことができました。快適感覚を味わいながら、あとはからだにおまかせです。痛みを抑制するホルモン分泌などからだに必要な無意識な反応によって、翌朝には痛みが軽減していました。
 「快」のききわけは、身体運動の法則に基づき、ひとつひとつの動きに対して快適感覚の有無をからだにききわけますので、頸椎伸展の連動を引き出しながらというように、目的を持ったひとつの動きからでも感覚をききわけることが可能となります。からだがどんな状況でも、「快」という感覚がききわけやすい状況を作る、これも操体を学ぶ我々の技量によって「快の質」が変化してくるからこそ、日々の学びが必要なのです。「快の質」がそのまま治癒能力に反映されてくるからです。
 僕が痛みに対する感覚が鈍感で翌日には痛みが軽減したのではなく(笑)、からだにききわけた「快」という感覚をからだが味わい要求を満たすことによって、からだに必要な生命能力が無意識に働いてくれたという、からだに感謝する結果になったのです。ありがとうございました。
 皆様も「快」をききわけるという感覚を大切にしてください。からだはききわけた「快」という感覚を求めているはずです。
 一週間お付き合いありがとうございました。平成24年もどうぞよろしくお願いします。