東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「橋本敬三から学んだ事〜その1」

こんにちは。一週間宜しくお願い致します。

一ヶ月位前から橋本先生の「カラダの設計にミスはない」を原稿用紙に移す作業を始めた。一日に最低でも原稿用紙3枚を目標にし、毎日欠かす事なく継続してきた.
なぜこのような作業を始めたかというと橋本先生の哲学や思想、そしてこの本が書きあがるまでの「努力」を少しでも体感したかったからである。本というのは本当に有難い物で書いた人の何年、何十年かけて学んできた事がほんのわずかなお金と時間で手にはいってしまう。そういった便利な世の中だからこそ本の有難さを見失いそうになる。本当に心の奥底から大切にしている本こそ何回も読み返すなり、書き写すと言った「敬意」を払わなくては書いた人に失礼だと思うようになった。こういった事を少しずつ分かってきたからこそ読むだけなく、その内容を書き写すことこそが自分には必要だと思いこの作業を始めたのだ。
このように日々、橋本先生の言葉と向き合っていくうちに本を読むだけでは分からない「人間•橋本敬三」の魅力が見えてくるようになった。私の家には橋本先生の写真が飾ってあり、幼い頃から何者かも分からぬその不思議な魅力に惹き付けられていた。もしかしたら私の操体との出会いはこの時からだったのかもしれない。その写真の橋本先生はいつも私の心に在った。昔はその写真の雰囲気から多くを語らない「聖人」のようなイメージであったのだが本の一語一句と向き合っていく中で温厚な人柄、少年のような心、誰もが惹かれる品性等、今まで私が持っていたイメージと違った一面を見る事が出来たのだ。
また橋本先生の哲学に関して私なりに新たな「気付き」を得る事もあった。
存知ている人も多いと思うが橋本先生が現役の時の操体は「楽か辛いか」という正体術を基にした診断法(D1)しか無かったのだが、著書を書き写していくうちに自分の「勘違い」に気が付いたのだ。それは橋本先生は現役の頃から「気持ちの良さ」をテーマにした臨床のビジョンを持っていたという事である。橋本先生は著書において「気持ちのいいことは何をしてもいい。苦しい方、痛い方に動くのではなく、ラクな方、気持ちのいい方へ動けばいい」と書かれている。また現役で臨床をされていた時に陥没骨折の患者に対し圧痛点を押してそこが「気持ちが良い」のでそこを押し続けるという事もされていた。こういった事から操体の将来のビジョンとして「気持ちの良さ」つまり快適感覚をテーマにする構想を持っていたと察する。しかし、それを体型化していく時間が無かった為、三浦先生や今先生をはじめとする後を託せる弟子達にその体系化を託していったのだ。そういった橋本先生の意思が継承されて現在の操体がある。だがその意思が操体に携わっている全ての人達に継承されているわけではない。それは当時の技術(楽)が継承されていても進化(快)していないということである。最近三浦先生はこういった事を言われていた、
「継承と転用は違う」
ただ学んでその技術だけを引き継いでいくのでは弟子ではなく、ただの受講生にしかならない。もし「弟子」として師の意思を継承し操体の看板を出すのなら師が成し得なかったものを体系化していく「義務」がある。それは人事ではなく自分事であるということである。そういった事を肝に銘じて精進していきたい。

続きはまた明日。