東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「橋本敬三から学んだ事〜その2〜」

操体では橋本先生の時代から現在に至るまで「腰(現在では骨盤)をカラダの要」としたカラダの使い方(身体運動の法則)を説き、その進化は現在も止まらない。
この法則を自分のカラダを通して学習してきた事で自分のカラダの歪みが大幅に改善され、そして少しずつではあるがカラダの使い方のルールを理解出来るようになってきた。私自身この学習の中で人間の本来のカラダの動きには「肩甲骨」の作動が欠かせないという気付きがあったのだ。「肩甲骨」の「甲」とはその字の通り甲羅という意味で亀の甲羅のように背中にくっついているイメージから名前が付けられている。そして「つなぎの骨」と言われていて背中と上肢をつなぐ役割を果たしているのだが、私の肩甲骨に対するイメージは野球でいう「二番バッター」で「縁の下の力持ち」みたいなイメージである。つまり肩甲骨とその周辺の筋肉の働きがなければ上腕や背骨、首、骨盤等は本来の役割を果たせないのである。
肩甲骨は臨床に携わっている者であれば必ず診る箇所であるのだが、一般の人は意外に意識が向けられない。意識が向けられない分、その周辺の筋肉も他の筋肉に比べて使用頻度が明らかに少ないのでガチガチに固まってしまうのだ。これは前鋸筋や肩甲下筋が固まってしまったことにより肩甲骨の動きが鈍くなってしまっているからだと言われている。
操体では普段使わない筋肉をよく使うのだが、確かに日常生活において意識が向かない細かな筋肉を使っているのが分かる。肩甲骨もその一つでこれが上手く使えないと、どうしても腕力で対応してしまったり、上手に全身形態の連動が出来なかったりする。
動物の「四足歩行」を見てみてもいかに肩甲骨が大切か理解出来る。例えば哺乳類は歩行上の欠点を無くす為に肩甲骨をカラダの側面に移動させたと言われている。その進化によって以前よりはるかに速く走る•歩く事が出来るようになったのだ。私自身も肩甲骨を開放出来た事で利き手と利き手ではない手の左右差がなくなったという経験がある。これは肩甲骨が使えるようになった事で小指がより利いてきた証拠だと思う。

余談だが昨日、今月から新たに始まった講習で全身形態の連動と肩甲骨の相関性に関する話があった。仰向けに寝て、上腕は真横の状態で膝を曲げる。この状態から親指を利かせながら上腕の押し込みと引き込みを行うのと小指を利かせながら行うのでは全身形態の連動性は変わってくるのだが、その違いを生み出しているのは肩甲骨の動きであった。全身形態が上手く連動していない人は肩甲骨が上手く使えていないのである。もちろん連動が理に適っていない理由はそれだけではないのだが、カラダの構造を操る上で肩甲骨が重要な役割を果たしているのはこういった事からも分かる。

最後になるが骨盤がカラダの要ならば、この肩甲骨は動きの要だと私は捉えている。こういった事からも肩甲骨を生かす事はまさに自然が与えた「知恵」であると思う。    
続きはまたあした。