東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

無意識について・・・1。

おはようございます。
昨日は、一日一日生まれ変わりながら、生きていかなければならない、と書きましたが、特別病気していないかぎり、誰でも活動の動と寝ている静があり、一日となっていると思います。
動の世界は意識を中心とする世界であり、静の世界は無意識の世界だと感じます。動の世界は意識を中心としていても、無意識に支えられている。無意識は動の世界でも静の世界でも、休みなく働いている。有難いことだと思います。無意識に支えられて一日を生き、無意識によって一日一日生まれ変わることが出来ているのだと感じます。
 この有難い無意識ということについて、橋本敬三先生も「寝相」「癖(くせ)」と題して執筆されたり、その他の執筆でも折に触れて無意識の天恵について書いている。
「生体の歪みを正す」本のの349ページには、
無意識の反応はバランス存続的に作動する。あらゆる動植物は皆そうしている。動物では自律神経がそれに関与する。けれども、人間の生命現象のなかで、呼吸、飲食、身体運動、精神活動の四つには意識関与が可能であり、天然法則性の識別、把握を可能にしている。無意識にも、或る程度、時間・空間的に生存は許されるが、突発事故対応性は保証されていない。
と書いている。
 これは活動の動の世界の時のことを表していると思う。覚醒時の行動は意識が関与するが、意識よりも表面的な心(自我)を関与させて、バランスを崩している人が多いと感じる。これは、からだのことをかえりみず、社会的あるいは人為的な対処ばかりに、心が働くからだと思う。
からだには自然法則が貫通しているが、無意識はそれを認知した上でからだの調和、心とからだの調和の為に働いている。しかし、心が社会的・人為的な対処ばかりに捉われてばかりだと、自然法則に背反する行いにもつうじてくる。自分自身が生活の中で最低限責任をもって営まなければならない「息」「食」「動」「想」を蔑ろにしてしまうということだ。ここに、からだにとってのストレスから病気への、健康傾斜の歪体化が進む要因がある。無意識はいつも調和に向けて働いているが、自分の心の持ち方で無意識の有難い働きを反故にしてしまっているということなのだ。他の動植物に見習うべき点は大いにあると思う。
しかし、生活の中の行動全部を無意識に委ねてしまえば良いというものではない。物質的にこれだけ豊かになった現代では、人間同士の取り決めにも対応しなければ、突発的事故対応性は保証されない。交通ルールを守らなければ、重大な事故を引き起こすというのはその典型だし、その他にも個人のおかれた環境により色々あると思う。ではどうしたら良いか。「息」「食」「動」「想」それぞれの自然法則を知り、より複雑化していく現代社会の中でも、それをしっかり意識して、応用して対応していくという事であり、人間同士の横のつながりを尊重しつつ、自然法則という縦軸をしっかり意識する、もしくは縦軸をしっかり意識してから、横のつながりに対応するということだ。
有難い事に、しっかり調和できれば「気持ちがいい」という感覚で、からだは応えてくれるように出来ている。


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どんどん複雑化し便利にはなったが、その分ストレスを抱え込まざるをえない現代社会に於いて、どうしたら現代社会と自分自身が調和できるか。それを「息」「食」「動」「想」の自然法則から、刻々と変化していく現代社会に対応できるものへと応用し、人為的面でも社会的にも貢献しているのが東京操体フォーラムです。そしてそれを公開する場が、来る平成24年11月18日に開催される秋季東京操体フォーラムであり、今回のテーマは「自力自動・自力自療」です。
  秋季プログラム 


人間も他の動植物と同じように無意識を基盤としている。しかし、人間だけは道具を使うことから始まり、文明を繁栄させる能力を与えられている。私達も先人から培われた繁栄にあずかっているわけだが、その中で健康とともに、それに見合った心を育めているのだろうか。人間社会の横のつながりばかりに心が捉われ、絶対的なものとのつながりを無視して、常に不安にかられていないだろうか。意識を向けるとよく言われるが、意識を向ける時には意識で心を統合しなければ、意識を向けるとか、意識するという事にはならないと思う。その意識は無意識とつうじた意識という事であり、その時の自我を中心とする心の状態からの意識は、意識と呼んではいても別物であり、その場合は心が向くということだと思う。
人間以外の動植物にも心はあると思うが、その心は無意識からつながる意識により統御されているのではないだろうか。人間も横ばかり知ろうとしていないで、自然法則を知り、縦につながる無意識と上手く付き合っていく必要がある。その上で横に意識を向けてみると、横のつながりはもっと、良いものへとなっていくと思う。文化、文明の新しい創造をしてきた人達というのは、そういう人達だと感じる。
寝ている時の、静の世界での無意識に関しては、明日とさせていただきます。 


2012年秋季東京操体フォーラムは11月18日(日)津田ホールにて開催。