東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

p1*[岡村郁生(おかむら いくお)]アナトミーフライト4

(百聞は一見にありての血肉となりき・・)

皮膚にも表情があるが、脂肪にも表情があるのだと知った。
脂肪は付着している部位により粒状にも膜状にも腫瘤状にも変化
している。結合組織もまた”無為自然”である。

 特に腹部の大網にお付着している脂肪は面白い。
 腹部の弱いところに移動して炎症を抑えやすくしたり、腫脹を防
いだり、保温に努め、速やかに直しうる状態を補助してくれる。
また個人差が激しいのは知っていたが、臓腑の周囲や腋下・膝窩
鼠径部などの隙間には、おびただしいほど粒状に付着していた。

提供された御献体モデル2体は、非常に対照的であった。
脂肪が少なすぎる老年の献体モデルと、壮年で筋肉質やや肥満のモ
デルは、いかなる環境にも対応できる”イノチ”の柔軟性を感じる。

 操体では「動きの分類は8つ」とあり、それに対応した”連動”が
ある。その一つの片鱗を伺わせるのはレイヤー(=層)、コンパート
メント(仕切り)、それぞれの筋肉を連結されたユニットとしての働
きを考えた際、筋膜の連なりを持って想像することが如何に重要であ
るか、更にイメージしてみる必要を感じた。

 神経にしても同様である。
 例えば11脳神経支配の副神経では延髄から出て僧帽筋と胸鎖乳突筋
を支配しているのだが、実際に筋膜から枝状に分布して僧帽筋のかな
り下方まで神経枝を伸ばしているのを確認すると、"経絡"であったり、
"アナトミートレイン"であったり、運動力学の連動システムまでも、
イメージは強化されていくだろう。

 「ツクリがあってウゴク」筋肉にも形状はあり、機能作用を成す。
その働きから抜けて形状でとらえつつ考えても面白い。

 筋肉には膜状の筋と紡錘状の筋があり、大菱形筋と小菱形筋と肩甲
拳筋の作用は共に肩甲骨を引き上げて寄せるのだが、肩甲挙筋は随分
と分厚い紡錘形であるのに対し、後は平たく強靭な膜状であった。

 この膜状の筋肉内には固有受容体が多く、その周囲をセンサーする
働きのほうが重要であるとの説明に加え、実際に見て触れて覚えてい
る知識をすり合わせることができた事は、まるでクロスワードパズル
を解いた快感のようだった。

 関節の周囲はホルマリンの匂いがキツく、関節包内を切開するたび、
鼻だけでなく、眼を刺すような刺激があった。
 すなわち、関節の周囲にはそれだけ密度を通じて閉じ込めておく働
きがあるのだろうか。

 肩関節の周囲ならば、内旋筋と外旋筋に分けて試験対策では覚える。
 それは記憶するには便利だが、実際にローテーターカフとしてクロ
スした上腕骨頭における膜状の構造を確認してみると、それ自体がス
ムースに動くこと自体、奇跡的なバランスであるように思えてくる。

 解剖学の本も、実際の解剖も、読む側のイメージ力は必要なのだ。
好奇心を持って眺め、触れて、確認すると、時間が惜しい程きりがな
くなり、そこから感じて得られるメッセージは際限がない。

  一つ一つ理解できたことは、臨生を通じて学んできた証。
諦めないで学ぶ。それは、法則の応用貢献を忘れなかったからである。
橋本敬三師の語る「操体は一生愉しめる」よう頂いている。有り難い。

解剖学の抜け穴―解剖学教室の講義余録から

解剖学の抜け穴―解剖学教室の講義余録から

(↑非常識の中に真実を観る視点が面白い)