おはようございます。
今回のテーマである「頑張るな」には、その時の勝ち敗けの結果ばかりに執着しすぎ、本来の目的や目標を失うな、といった戒めにも感じる。
柔道の神様とまで崇められた三船久三十段は、前回の東京オリンピックで柔道競技運営委員を務め、国際競技としての柔道の完成を見守った後、その翌年に81歳で永眠したという。
前回の東京オリンピックから正式種目に採用された柔道は、日本のお家芸として全階級での金メダルが期待されていたという。
そして、日本選手は期待に応えるように順調に勝ち進み、金メダルをとっていった。しかし、もっとも重要視していた無差別級だけは金メダルがとれなかった。
無差別級の決勝で、日本選手がオランダのヘーシンク選手に敗れたその瞬間、日本柔道界の関係者の多くが項垂れた。生き恥をさらした、とまで感じた人も多数いたという。
しかし、三船十段は「ついに日本柔道も、ここまできた、世界の柔道になったと悦ぶのが本当」と言ったという。
三船十段からしてみれば、ヘーシンク選手も講道館の弟子であり、外国で発生した柔道を習ったわけではない。日本から学んだ弟子の一人が優勝したわけである。
「そこに日本人だの外国人だの差別をつけるのは日本人の肝っ玉の小ささだ。そんなことでは柔道は世界の柔道になれない。日本人も世界の日本人にはなれませんよ」
そして三船十段は、こう続ける「だが、こういうことはいえる。日本はやはり世界の柔道修行者の中心地であり、目標なのだから、大きな道の発展のために、人一倍の工夫と、さらに一段の真剣な努力が必要だということです」
こうした発言は、当時の社会情勢としては異色だったと思います。しかし、一連の発言は本質をついていると感じます。