(続き)
「マスクをして入店をお願いします」と書いておく入店制限。
公共性の高い場所でも行えるように、首長のお墨付きを出す。
全国初として神奈川県大和市で条例化して疑問視されている。
「大和市思いやりマスク着用条例、推奨」
これに関しては、罰則がない。とはいうものの、強制力のない
理念にとどまる程度のお願いでは何故いけなかったのだろう。
災害心理学、社会心理学だけでなく、最近は医療用語に用いる
こともある「正常性バイアス」は一種の自己防衛の仕組み。
何か起こるたびに、過敏に反応していてはすぐに疲れてしまう。
人の脳には、心の平穏を守ろうとして防衛する仕組みがある。
それは時として、先入観を植え付けたり偏見を持たせてしまう。
ではなぜ、人は、正常性バイアスに囚われてしまうのだろう。
しかし、それを考え、その理由を見事立派に説明したとしても、
それは「正常性バイアス」から解き放ち、現実的に人々を行動を
変化させることに繋がるかどうか、はなはだ疑問は残ってしまう。
昔からある逸話では、このようにあります。
からだに矢が刺さって弱っている人がこう言いました。
「いったいこの矢は、誰が撃ったんだ!」
「どんな奴が、一体何の目的で、なぜ私にこんなことをしたんだ!」
それを見ていた人は、「そんなことより一刻も早く矢を抜きなさい」
そういって、速く手当てをしなければ命が危ないからと諭しました。
しかし矢が刺さったまま「誰がやったのか」とそれに囚われてしまい
何よりも大切な、自分自身の命を落としてしまう、そんな逸話です。
いま、やるべきことを、やる意味を、行動にすぐさま映し出せること。
前述した行動経済学者の大竹文雄氏は実際に、県民の方と共同で避難
させるとき、本気でどのような呼びかけが有効なのか、調べたのです。
(続く)