東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

空の輪に想いを重ねて⑤

(続き)

人種や身体的特徴を理由に入店を拒否すれば、差別や人権侵害

に相当するけれども、事業の特殊性を維持するために、ドレス

コードで入店の可否を決めるのは、事業者の自由となっている。

 

ただ、高い公平性の求められる金融機関とか、許可制の事業者

においては、マスクも「新しい生活様式」として政府が推奨し

ているから守るべきだと、他人を過剰に非難するのはおかしい。

 

それはともかく、マスクをしていると顔面の半分は皮膚の感覚

そのものに、常に刺激に近い干渉を受け続けることになる。

 

散歩中に、ふと考えてみる。

この世が闇でおおわれていたならば、他人のマスクは見えない。

それではマスクをどのように識別しているのだろうか、と。

 

既に実験では成功しているオンラインによる皮膚感覚の再現。

9枚の膜に振動が生じるように作られたものを、皮膚に置けば、

離れていても実際に皮膚に触れられた感覚は再現できるらしい。

 

からだから言えば散歩はリアル、脳ならバーチャルもあります。

私もその実現の可能性をスカイリムに入り、散歩だけしてみる。

視覚のみで空は揺れ、地面も揺れ、大きな地響きさえも感じる。

 

そこで、ふと自分のメモ帳を開いてみると地震、台風、豪雨で

思い出し読んだのは、行動経済学者の大竹文雄氏のメモでした。

 

それは今から六年前の夏、広島県で豪雨による土砂災害が発生

したことにより、70人以上の方が亡くなりました。

 

そして、もう二度とこのような悲劇を繰り返すまいと、その際

県民ぐるみで団結しようと、防災運動が展開されたのです。

非常時の持ち出し品準備に、避難場所の確認など行い、県民の

防災意識は著しく高まったそうです。

 

ところが、その四年後の夏、再び豪雨が襲い、広島県で土砂崩

れや浸水で、また100人を超える方が犠牲になってしまった。

人々の防災意識は高まり、非常時の知識や備えもあったのに、

避難勧告、避難指示が出ても避難しなかった人がいたのです。

 

「自分は大丈夫」

「すぐに避難しなくてもいい」

 

そのような危機を危機と認めず、自分は大丈夫だと思い込む。

 いわゆる「正常性バイアス」に囚われ、妨げになったのです。

 

                        (続く) 

 

(注:正常性バイアスとは、日常生活の心理的ストレスを軽く

 する為、無意識に行われるストレス軽減の仕組みとされる)