東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

衛生動物による感染被害

 衛生動物とはヒトの回りにいる有害、不衛生な小動物のことで、言葉の上では逆説的な意味で捉えるかも知れないが、それらは病害を及ぼす恐れがあり、適切な距離や対処の仕方を学ぶ必要がある。 具体的には日本脳炎のウイルスを運ぶ、出血熱のウイルスを撒き散らすドブネズミ、ヒトに寄生して瘙痒を引き起こすケジラミ、またヒトをショック死させてしまうスズメ蜂等、無数に生息している。

 

 我々の住む都会の環境は、無菌ではなく病原体も多いので特に感染しやすい。 一方、清潔な郊外の環境においては、感染が起こりにくいのは確かであるが、免疫力が低下すれば、自分が持っている常在菌の感染から逃れることが難しくなる。 夕暮れ時、川の水が淀んだ所でユスリ蚊が異常繁殖し、堤防を散歩していた人がユスリ蚊の抗原を多量に吸い込んでしまい、ユスリ蚊の抗原に対してアナフィラキシーショックを起こし、その場で突然死するというようなことも起こっている。

 

 では屋内ではどうか、ふだん生活している部屋の中にもダニがいっぱいいる。 ダニはどこにでも生息しているが、湿った布団もダニの天国であり、布団に付着したヒトの垢やフケなどの栄養をしっかり食べて、種族保存の基盤にしている。 客布団が長らく押し入れに入ったままであると、適当な湿度と温度の好環境に支えられてダニは確実に増えている。 そこへ久しぶりに客人が泊まることになると、ダニは新鮮な食糧(ヒト)に歓喜して食らいつく。 こうして客人は、翌朝、からだじゅうをボリボリ搔きまくるようになる。

 

 ダニというのはその数が問題であり、クリーナーでしっかり掃除しているフローリングにはダニは少ないが、細かく掃除ができないカーペットでは高温多湿になりやすいので、猛烈な数のダニが発生している。 そんな部屋でダニと同棲しているとどうなるのか? アトピーや喘息等のアレルギー疾患がすぐに結びつく、その原因はハウスダスト、つまり家の中の塵埃であり、ダニの排泄物や死骸が多量に含まれている。 さらにダニは不愉快な痒みやアレルギーだけでなく病原体を運ぶ感染ベクターでもある。

 

 ダニ以外にも感染症の病原体を媒介する虫類は、蚊、ツェツェバエ、シラミ、ノミ、サシガメ等多数いる。  その病原体の種類は、細菌、ウイルス、リケッチア、寄生虫等であり、感染症の種類も マラリア、アフリカ睡眠病、フィラリア症、デング熱、黄熱、日本脳炎、ウエストナイル熱、オンコセルカ症、ロア糸状虫症、野兎病、発疹チフス、回帰熱、ペスト、ツツガムシ病、クリミア・コンゴ出血熱、ロッキー山紅斑熱、ライム病等多数あり、虫に刺されることは大変危険なのである。 また、ヒトのからだを毒で傷害する毒蛇ヤマカガシ、マムシ、ハブ等の小動物にも注意が必要だ。 

 

 生物の毒がヒトのからだに入る経路は次のとおり

咬まれたり刺されたりして毒が体内に入る経路

毒をもった生物にヒトが触れて、その毒が皮膚を通して入る経路

毒のある生物を人が食べて腸管からその毒が吸収される経路

 

 自然界というのは容赦のない弱肉強食の世界であり、自分の身を外敵から守る術を持った生物だけが生き残ることができる。 当然、生物が持っている毒もその一つである。 都市に住んでいる人間は危険生物について、まったくもって疎いとしか言いようがない。 しかし、知らないという状態は、生きてゆく上でとても危険なことなのだ。 森の中、川の中、海の中で遊ぶ前に、毒のある生物に関する知識を都会に住む人間は仕入れておく必要がある。 

 

 衛生状態が良くなった我が国においても、いまだにアタマジラミを根絶することができないでいる。 アタマジラミというのは、成虫がヒトの頭髪からヒトの頭髪へ直接移動して感染する形態である。 そのため感染の機会があると、感染が成立する確率が非常に高くなる。 この感染性の高さこそが、衛星動物がしぶとく生き残っている理由なのである。 

 

 この時代、感染症から身を守るということこそが健康で安全に生きてゆく暮らし方であると思う。 そのためには自分のスタイルに合った免疫力を上げる必要がある。 細菌やウイルスの一部であるタンパク質が抗原であり、それが免疫反応の引き金となる。 この抗原に反応して、その抗原に特異的に結合するタンパク質として、抗体が産生される。 そして抗体は抗原に結合することにより抗原を体内から排除する働きをする。 この排除する力が免疫力というもので、この力をアップするには操体の講習会で教えているように 「息・食・動・想」を正すことと、それに加えて皮膚浴の日常習慣にほかならない。

 

 明日からのリレーブログは、香さんが引き継ぎます。 どうぞお愉しみに!