月が出ている夜に外に出てみると、
ほとんど街灯のない家の前も、月の光で思いのほか明るい。
お陰で山に続く坂道も仄白く浮かび上がり、
目が慣れてくるとさらに奥にある木々の輪郭も見えてくる。
足下から立ち上がってくる青々とした草の匂い、
近くをチョロチョロと流れる水の音や蛙の声が混じる空気はぬるくやわらかい。
そんな7月の空気を感じながら、ぼーっと夜空を眺める。
いつの間にかすーっと吸い込む息が深くなる。
自分でも意図せず深く息を吸い込んでいる瞬間が好きで、
からだの中を風が通るような感じがしてくる。
住んでいるところのその時々の夜の空気を味わうのは好きで、
去年や一昨年も今頃やっていたことだけれど、今年はちょっと感じ方が変わっている。
なんだかホッとする。
新しい生活様式になったり、感染予防に努めるようになったりで、
今までとは変わってしまったことに目がいきがちだったけれど、
こうして変わらずにできていることもある。
その変わらずにできていることの中にも変わっていることはあるから、
やっぱり色んなことが変わってきているのかもしれない。
なんだか最近振り返ることが多くなったけれど、
元に戻りたいというわけではなく、ここからがこれからの始まりという気がしている。