東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

免疫力と寛容力

自分のからだや自分の都合ばかりを考えているだけでは間に合わず、自分以外の他者という存在について、もう少し改まって考えざるをえない状況にちょうど対峙していたタイミングで、今年の春季東京操体フォーラムは開催された(zoomによる開催)。

 

その際に、当フォーラムでも相談役としていつも大変お世話になっている太田剛先生《株式会社ギア(編集工学機動隊 GEAR)代表〉から免疫学者の多田富雄氏の「免疫の意味論」という、本を御紹介いただいた。この書籍以外にも、その日の話題を深堀する上で有用な著作をたくさんご案内いただいたが、自分にとっては特にこの一冊が響いた。

 

免疫の意味論

免疫の意味論

  • 作者:多田 富雄
  • 発売日: 1993/04/30
  • メディア: 単行本
 

 

太田先生より「自己」と「非自己」について考える上で、この一冊は読んだ方がいいよと薦めていただいた。自身のからだで真っ盛りに起こっている免疫という現象と、目に見えないウイルスという存在感、そして自分が考えざるをえないように感じ始めていた他者という存在について、あらゆる角度からその点と点をつなぐ手がかりがつまっているような本であるように感じられた。

 

大変興味深かったのは、免疫という在る種の「拒絶」に関わる人体の現象に関わることを研究されている専門家が、その著作のなかで「寛容」ということをテーマにされていたことだ。

 

この本を読みながら、免疫や免疫力という事に関しての感じ方が変化したように思う。「免疫力を高める」というと、非自己(例えばウイルス)を適切に排除していく機能が十分に機能し保たれているという印象が今までは強かった。一方で、ひとつの捉え方として、免疫力が高いというのは、非自己に対しての「寛容力」があるかないか、とも言いかえられるんじゃないかと今は思い始めている。