東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私のズッコケ操体クロニクル⑥  昨日の続き

 当院を案内したことで、彼も大いにやる気になったようだ。 そして、その2日後に連絡があり、話を進めてくれとの返答だった。 私はすぐに当テナントビルのオーナーに掛け合った。 同業の仲間に引き継いでやらせたい旨、説得するのに頑張った。 その結果、名義変更の手数料(賃料1か月分)で話がまとまった。 彼はこの金額に既に納めている保証金相当額を私に支払うことでテナントの引継ぎ契約が完了した。

 

 そして、明け渡しまで半月、当院の患者さんにはよく説明し、納得してもらうよう努めた。 明け渡した後、次に兵庫県三田市の駅近のテナント物件を探したところ、駅から5~6分の場所にあるマンション1Fのオフィスが見つかった。 これで再々デビューすることになる。 

 

 この地は現在、三田市となっているが、元々は有馬温泉のある旧有馬群であり、一千万ドルの夜景で有名な六甲山の北側に位置する北六甲の地域である。 大阪の人は南側の神戸市の地域を表六甲と言い、北側にあるこの地を裏六甲と称しているが、正しくは北六甲である。 この地の人は誰も裏六甲などという言い方はしない。 それ故、今度はこの地にちなんで 「北六甲操体院」 というネーミングにした。

 

 再々スタートするこの場所では操体を中心とする施術に加えて、操体ヨーガの臨床版ともいえるヨーガセラピー、並びにサイコ・セラピーも併設することにした。 精神療法のどこが操体に関係しているのかと疑問を持たれるかも知れないが、精神療法と操体の双方に知識と経験がある人なら当然、理解できると思う。

 

 特にブリージング・セラピーであるリバーシング(rebirthing)においては、場合によっては肉体的・感情的に激しい動揺と混乱を招くこともある。 ブリージングという名のとおり、リバーシングは 「呼吸して、感じる」 ことであり、操体の動診における 「動いて、感じる」 のも同じように共通しているのは、「感じる」 ということが、ともに 「自力」 から 「自療」 につなげるプロセスである。

 

 我々は肉体・精神・感情の緊張を呼吸によってエネルギー的に押さえ込むことでエネルギーを収縮させてきた。 それを呼吸によってその収縮したエネルギーに触れ、刺激を加え、強い流れを呼び起こす状態になった時に、ドラマチックなほどの悲しみ・怒り・恥ずかしさ・怖れ・性的興奮を覚えたりする。 肉体の反応も、ほてり・悪寒・吐き気・呼吸困難などのほか、からだの一部がどうしようもなく震えたり、顔や手足に極度の痙攣が生じたりすることもある。 

 

 感情や肉体のこうした状態は苦しいし、かなりの恐怖を感じるかも知れない。 そのようなときに泣く・叫ぶ・うめく等、頭を振ったり、拳を打ち付けたりして、からだを動かすことによって本能的に外に向かって表現しようとする。 感情や肉体的緊張を 「表現」 することと、「感じる」 こととは、まったく異なる行為である。 表現は顔や手足の末端に生じるが、収縮エネルギーの根底にまで届くことはない。 

 

 そのような収縮パターンを完全に解き放つためには、からだの中心に生じる感情に届かなければならない。 それは呼吸エネルギーの流れを保ちつつ、「感じる」 ことに専念しなければならないのである。 こうしたときに、深い意識的な呼吸を通して収縮エネルギーそのものに触れ、それを動かし、ついには解き放つことができるのである。 

 

 この 「呼吸して、感じる」 流れを維持するのに、操体法で 「渦剰波」 と名付けられた皮膚操法を胸の中央に施すことにより、中断することなく、呼吸して、感じることを続けることができるようになる。 これは一大発見と言えるものであった。 このように被験者の進歩を大いに助けることができるのである。 そうした理由で操体とブリージングは深く関連しているということができる。