学校を卒業した後は、都内の鍼灸接骨院に就職した。
卒業するまでは、リラクゼーション系のマッサージ店でバイトをしていたのだけれど、柔道整復師の資格を持っていた同級生に誘われたのだ。
グループ内で新設院ができるから、オープニングスタッフとして働かないか、ということだった。
先が決まっていなかっただけに、この時はありがたかった。
この鍼灸接骨院には四年ほど勤めたけれど、三年が経とうとする頃、「操体法」もやっているという柔整師が入ってきた。
「操体法? あのとき見たヤツだ」、と記憶が蘇る。
そのスタッフの治療を横目で見ていると、両膝を立てさせて、膝の裏を診ている。どうやら圧痛があるらしい。
足首の所に体重をかけるように手を置き、足首を反らせるように指示して、少ししてから一気に力を抜かせる。
多分、足関節の背屈の操法をやっていたんだと思う。
「膝の裏の痛みはどうですか?」、「今は痛くないですね」、というやりとりをしていたので、
「このあとどうするんだろう?」と思っていると、そこから先は特に説明もなくマッサージをし始めた。
そのスタッフは割と初めに、それをしてからマッサージをすることが多かった。
これで効果が上がっていれば、「どうやるの?」と聞いたかもしれないけれど、正直そんなふうには見えなかった。
あまり魅力的には思えずに、この時もそれっきりになってしまった。