健康の維持や病気の予防をするために、そのセルフケアとしてヨーガを実践している方も多いと思う。 しかし、ヨーガで体位法が発達したのは、健康や美容のためではない。 体位法の本来の目的は、良い姿勢をつくるためである。 この姿勢が間違っていると、深い禅定へ入ることができない。 その禅定に入れないと、ヨーガで求める瞑想はできないからである。
ほんの僅かでもからだが歪むと、精神集中に支障がでる。 その歪みのために神経が渋滞して、完全な精神統一を妨げることになる。 インドのヨーギ(瞑想行者)たちは、現代人の想像をはるかに超えた境地を、狙っていたのである。 古代のヨーガ経典には、厳正な姿勢と呼吸とによって、圧倒されざるを得ない高い境地にはじめて到達し得る世界だと記されている。
この経典に記されている歪みのない姿勢というのは、全身の筋肉のどこにも凝りがないことである。 つまり血液循環が、完全無欠の状態であり、脳脊髄からからだの抹消に至るまでの全神経が、最高に活躍できることを言っている。
ヨーガでいう 「悟り」 とは、全神経の所産であるとみたヨーギ(瞑想行者)たちは、このような姿勢を極度に大事にしたことから、ヨーガの体位法は発達してきたものである。 姿勢はこういった体位法などでも矯正されるかも知れないが、日常生活においては、寝ていても、起きていても、姿勢はいつでも随伴するものなので常平生のセルフケアの方がより大事なことと言える。
姿勢のセルフケアにおいて、まず寝る姿勢に注目したい。 寝る姿勢については、「仰臥位」、すなわち仰向きに寝るのが、人間にとって自然な寝姿である。 犬や猫は横向き(側臥位)に寝ているが、それは人間と違って、竹かごのような肋骨が背骨から縦に長いから、肋骨を横にして寝るべきだ。 しかし、人間はというと、直立した背骨からその竹かごのような肋骨が横に長いので、仰向きになって寝るのが自然である。 卵でも、安定させて置くには、縦に立てるのは難しいが、横に置くのはやさしいだろう。
ただし、からだの調子によっては、横向きに寝たいときもある。 こういった場合、大抵は、病患が起こっている側を、上にして横になるものだ。 上位の側の方が、からだの重さがかからないので血液循環が良いからである。 もし子どもが、片方だけを下にする癖があるとすれば、その上側に病患が起こっているものとみて間違いない。 また夫婦が共にするベッドなどでも、ときには左右の位置を交換しないと、夫婦とも一種の片輪になってしまう。 このように一方だけを下にして寝る癖がつくと、その下側を弱化することにもなる。 意識的に気をつけたいものだ。
寝る姿勢ケアでもう一つ特筆したいのは、「伏臥位」 、伏せ寝のことである。 動物たちと違って直立二足歩行をする人間にとって、腎臓が弱りやすいので、腎臓のためには、就寝前のセルフケアとして、5分間はこの伏せ寝と仰臥位での腹式呼吸15分をセットにして、私は行っている。