東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私のセルフケア⑤

 昨日からの続きで、寝る姿勢のセルフケアとして、もうひとつは姿勢そのものではないが、寝る時の 「枕」 についても、セルフケアの一環として述べておきたい。 本来、枕は頭ではなく、頸を置くためのものである。 自分の薬指を半径とした半円の堅い枕(丸太や孟宗竹の一節で加工できる)、これを木枕と呼んでおり、この木枕を就寝時には使用する。 頸に当てた木枕で寝ている間に、頸椎が矯正されることになるが、慣れるまでは、多少の努力が必要である。 私の患者さんにおいては、眼のかすみや鼻のつまりが、この木枕を使用することでだけで治っている。

 

 人間は、一日24時間のうち、三分の一の八時間は睡眠に当てているが、寝る姿勢ケアはまだある。 それは、睡眠時にからだを委ねるスポット、すなわち寝床も重要なポイントになる。 軟らかすぎるスプリングコイルが入ったようなベッドに寝ると、脊髄に歪みをつくってしまい、腎臓を害うことになる。 また睡眠中に行なわれる自然良能作用も十分に働くことができない。

 

 就寝時の理想的なベッドというのは、フローリングの上に、毛布1枚を敷いたものであるが、馴れるまでは少々寝にくいと思う。 しかし、1カ月もすれば、必ずその良さがわかってくるだろう。 このようにして寝ていると、睡眠中に脊椎の副脱臼が矯正され、また腎臓も強化され、睡眠時間も短縮されることになる。 スプリングコイルが入っている軟らかいベッドが、どんなに血液循環を妨げるのかというのは、板のベッド習慣のある私が、ホテル等のスプリングコイルのベッドに寝た折、いつも思い知らされる。

 

 次に立位の姿勢についても、考えてみたい。 立ち姿というのは、顎を引く ことと 恥骨を引くことと、足の拇趾に力をこめる ことが、立位での私のセルフケアである。 頭は重いのに、それを支える頸椎は、側面の中央より後方にある。 それが原因で顎は、年齢を経るに従って前方に突き出てくることになるが、それは頸椎を歪めることになるので、私が行なうセルフケアでは、自身で気がつけば意識的に 「顎を後方に引く」 ようにしている。

 

 それから 「恥骨を引く」 というのも、顎と同じように重力の問題である。 頭と胴の重量は、仙腸関節にかかってくるが、それを受け止めている股関節は、その垂直線下にはない。 それ故、年齢を経るにつれて恥骨が前に突き出てくることになる。 すると、直立のために狂いやすい仙腸関節が、ますます外れていき、骨盤内の器官がまず傷害され、次に両脚が弱まり、やがて全身が歪んでくる。 そこでも私は、気がつけば意識的に恥骨を後ろに引くようにしている。 そうすることで股関節が仙腸関節の重心線に近づき、関節が安定して、終日立ち働いても外れにくくなる。

 

 立位でのセルケアの最後は、 「足の拇趾に力をこめる」 ことである。 これは、年齢とともに股関節が外転していくのを防ぐために行なうものだ。 これも気がつけば意識的に行なう私のケアである。 年を重ねると、重心が足裏の外側に移行して、両足の両外側で歩く形になり、歩行を困難にするだけでなく、脳に悪振動を与え、肝臓をも弱めることになる。 よく年寄りが股を開いて歩くと言われているのはこのことだ。 ゴリラもこのような歩き方をしているから、いつまで経っても頭脳が発達しないのである。