東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私のセルフケア⑥

 昨日までは姿勢のセルフケアであったが、今日は、からだの動きのセルフケアに入っていきたい。 動きというのは筋肉のことである。 その筋肉のセルフケアとして話を進めたい。 これについては、肩と頸の力を抜くことと、腹部の 丹田に力を込めること、そして肛門を内に締める こと、の三つが私の行なう動きのセルフケアである。

 

 「肩と頸の力を抜く」 のは、心臓からの血流が、堅い肩と頸に妨げられることになってしまい、頭脳への血液循環が落ちるのを防ぐためである。 試しに少し肩を上げ下げしてしてから頸をまわし、肩と頸の力を抜いてみたら、頭脳は鮮やかになり、眼も甦ることが解るはずだ。 人間は頭を使い、手も動かすことで当然、頸も肩も凝ってくる。 その必然性を自覚して、こまめに、肩と頸の力を抜いて柔らげるようにすることが、このセルフケアの秘訣でもある。

 

 次に腹部の 「丹田に力を込める」 というのは、いろんな意義が含まれている。 これによって、腹筋力をつけて仙腸関節の亜脱臼を防止することができるのだ。 この腹部というのは、直立する人間の 「鬼門」 でもあるがゆえに、静脈血は腸部に鬱積することになる。 これは人間が持つ病患の大きな原因の一つでもあるので、腹部の丹田である下丹田の丹田力を修練することは、人間である以上、必須のセルフケアである。

 

 下丹田はまた、心の重心になっている。 この下丹田に力がこもっていることによって、全身の神経系が統合され、それはそのまま精神統一が可能となり、からだ全体が快調に動くことができるのである。 このように丹田力ができることで、全身の筋肉もうまく結合されて、正確にして敏捷な力が湧いてくる。 先に述べた頸と肩の力を抜くことは、必然的に丹田力をも増すことができるのである。 心の重心である下丹田が不安定だと、揺らぐことになるのは何も卵ばかりではない。

 

 からだの動きのセルフケアの三つめは、「肛門を内に締める」 ことである。 これは、丹田力をつくる絶対条件である。 下丹田に力を込めても、肛門が緩んでいたのでは、穴の開いた風船と同じで、そこから丹田力が漏れてしまう。 この理解のない者が、肛門締めをしないで、腹筋トレーニングなどによって丹田力を訓練したために、痔になってしまうこともある。

 

 肛門締めはまた、大腸を直接刺激することで、排泄力が高まるだけでなく、脳の血液循環も高めて、理性も、感性も、よく働くようになる。 肛門をしめているうちは死ぬことはない、というのは、それが脳中枢を刺激しているからである。

 

 下丹田は心の重心であると、先に述べたが、その心はからだを支配し、また、からだは心を支配する、という法則がある。 心で笑うと、顔の筋肉もすぐ笑う。 これは一瞬にして、大脳、間脳、中脳、小脳、延髄、脊髄を介して、運動神経が働き、筋肉が動かされたからである。 顔に火の粉が飛んで熱いと感じたのは、知覚神経を通して、大脳にまで伝達されたものである。 このように運動神経と知覚神経は、心とからだとの中間にあって、心とからだをつないでいるものだ。