今回は 「セルフケア」 という動物の本能とも言えるテーマだ。 私個人のセルフケアに入る前に、人間のセルフケアそのものの必要性について触れてみたい。
野生動物は殆んど病気をすることがないのに、人間ばかりが病気に苦しんでいる。 同じ地球上に棲む動物であるのに、まことに不公平なことではないだろうか。 これにはきっと何か理由があるに違いない。 主に人類だけが病気になるなんて、とてもじゃないが納得できない?
ライオンは強靭な牙を得て、キリンは長い頸を得て、鳥は大空へ飛び立つ翼を得て、人間はというと、頭脳というものを得ることができた。 そしてその頭脳が 「文明」 を誕生させ、野生の動物界からは大きな距離をつくることになった。 このような文明の進歩は確かに人類の暮らしを豊かにさせたように見える。
しかし、その文明は同時に人間が病気に苦しむ素因であることも事実である。 人類は頭脳を得て直立二足歩行によって、からだの中心である 「腰」 が歪んでくる。 人類が直立するようになってから、60万年も経った。 しかしながら人類の先祖が、魚やトカゲや野生の哺乳動物であったのはその何千倍も長い期間だった。 時系列の流れから言うと、人類が直立するようになったのは、つい最近の出来事なのである。
人類が抱え込む病気の悲劇は、ちょうどこの時期から始まったようだ。 人類の脊柱と骨盤の仕組みは本来、構造力学的に、直立二足歩行するようにはできていない。 馬や牛のように、四足歩行するのに最も安定する脊柱と骨盤の構造になっている。 もし、家屋をそのまま横倒しにしたら、梁が柱の役目を担うことになり、建物を支えることができなくなって崩れてしまう。
人類の背骨も、元々は梁の役目として設計されている。 その梁が柱にされたのであるから、梁であった柱はその役目を担うことに無理がある。 文化生活に慣れ親しんだ人間の背骨を背後から眺めると、大抵は左右にS字弯曲となっているのが見てとれる。 そしてその85%は、骨盤の左側が上がり、右側が下がっている。 その理由は、過剰な右利き手にもかかわらず、左足に重心が移動していないからだ。
野生動物で人間のような背骨の歪みを目にすることはまずない。 食卓においても、背骨の曲がった魚を見たことは未だかって一度もない。 背骨の歪みが起こると、脊椎骨の変位によりその中を走る脊髄神経が圧迫されて動物としての活動が鈍ってしまうことになり、体内を巡る血液循環を阻害することになる。 このように疾病原因の一つは間違いなく背骨の歪みである。
我々が人類であり続ける限り、背骨の矯正に日頃から努力しなければ、必ず病気を発症させてしまうことになる。 もし、この努力をするのが嫌だというのなら、野生動物と同じように四つん這いになって歩けばよい。 歪んだ背骨の矯正という、こういった努力こそが 「セルフケア」 と言われるものであり、文化的生活をおくる人間にとって必須の健康を維持するための条件なのである。
明日からは私自身のセルフケアに入っていきたい。