東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私のセルフケア②

 私自身のセルフケアの中で、絶対に外せないのが 「呼吸」 である。 人間の呼吸については特に注意しなければならないことが多くある。 私は身近にいる犬や猫が呼吸しているのを長年にわたって観察を続けてきた。 人間と犬や猫の呼吸を比較すると、大きな違いに気づく。 それは犬や猫は必ずからだ全体で呼吸していることだ。

 

 犬や猫の呼吸は、腹部全体が十分に膨らんで、そして縮んでゆく。 屋根の上で寝ている猫を見上げれば、腹全体で呼吸している動きが、少し離れたところからでも見てとれる。 人間の場合は、すぐそばへ近寄って見ても、いつ吸って、いつ吐いているのか分からない。 まして犬猫のように腹まで動いて呼吸している人は殆んどいない。 人間の呼吸がいかに浅いのかが実感できる。 

 

 人間社会においては、結婚をして引っ張り合わなければならなかったり、会社に行って揉み合わなければならなかったり、子どもができて教育しなければならなかったり、自動車を持てば保険もかけなければならなかったり、また、自分の葬式の費用まで用意しておかなければならなかったりする。 本当にイライラすることばかりである。

 

 これでは呼吸が浅くならないはずがない。 この呼吸というのは自律神経の最もよく働いているところであり、人間の感情に直結している。 心配すると浅い呼吸になり、怒ると荒い息になり、驚くと吸う息に力が入り、落胆すると吐く息に力がこもる。 賛成だと思うと息が長くなり、不賛成だと思うと息が短くなる。 泣くと肩先で息をし、笑うと腹で息をする。 

 

 このように呼吸は、人の感情を的確に表現している。 それに比べて動物たちはというと、結婚もしないし、会社にも行かないし、子どもを学校にもやらないし、保険もかけないし、また墓も立てないので、のんきな生涯である。 それゆえ動物たちは悠々と呼吸をすることができるのである。 故に天寿を全うできるのだ。

 

 人間は生理学上、最低でも125歳まで生きられるというのに、ほとんどの人がその半分位あたから病気になって、健康寿命を続けることができない。 そして大半が100歳を待たずしてくたばってしまう。 しかし、今さら頭脳が発達してしまった人間に、動物たちのような生き方を奨励するわけにもいかない。 

 

 そうなってくると、どうしても呼吸法を習得して、心配とか怒りの感情を平安な感情に変える必然性が生まれてくる。 そのようなセルフケアのテクニックとして私は、座位で行うのではなく、「仰臥位での腹式呼吸」 を実践している。 しかし、この仰臥位での腹式呼吸による本当のねらいは免疫力を高めることにあり、単なる肺呼吸に伴って行われるガス交換に止まらない。 その内容については明日につなげたい。