呼吸によるセルフケアとして 「仰臥位での腹式呼吸」 というものを昨日述べたが、今日はその詳細な内容について話してみたい。 私自身の呼吸によるセルフケアの目的は、免疫力を高めることにあると、昨日述べた。
ここでいう免疫力というのは、細菌やウイルスに効果的な抗体をつくる 「獲得免疫」 のことではない。 獲得免疫のような特定の病原体に対する強さではなく、全般的なからだの抵抗力や丈夫さをつくっている 「自然免疫」 のことである。
たとえば、新型コロナウイルスの感染によって重症化する人としない人がいるこの差は、その人が持つ自然免疫の強さによって決まってくる。 日常的な風邪のひきやすさや、癌などの発症リスクを大きく左右するのもこの自然免疫の働きである。
そのような自然免疫を高める条件は、リンパ液の流れをよくすることである。 リンパ液の流れが良くなると、リンパ球やマクロファージやアルブミンが体内を再循環して、異物の排除に強力に働くことができるからだ。 ではどのようにしてリンパ液の流れをよくすることができるのか?
まず、「仰臥位」、すなわち仰向けになるだけでリンパ液の流れがよくなるのである。 何故ならからだに約2ℓあるリンパ液のうち、脚と腹部で全体の80%を占めており、そのリンパ液はいったん腹部にある 「リンパ液の貯水槽」 に溜められる。
この貯水槽を 「乳糜槽(にゅうびそう)」 と言い、横隔膜の下、臍のすぐ上あたりに袋状の伸縮自在な袋が存在している。 この乳糜槽はリンパ胸管につながっており、うまくここにリンパ液を送り出すことができれば、リンパ液の流れが促進されて、静脈へと流れ込んでゆく。
ところが乳糜槽は下腹部にあることから、からだを起こした状態では重力の影響を受けて、効率よくリンパ胸管にリンパ液を流すことができない。 そこで仰向けになることで乳糜槽からリンパ液が流れ出し、その流れが促されることになる。
このリンパ液の流れをもっと勢いよく流しだすことができれば、リンパ液の流れを加速させることができる。 そのためには、その仰向けの状態で腹圧をかける、つまり、腹式呼吸を行うことで、リンパ液は勢いよく流れだすことができるのである。
腹式呼吸は肺に深く息を吸い込むことで、肺の下にある横隔膜が下方に押され、腹部が膨らんでくる。 その息を今度は腹部が凹むほど吐ききることで、深い呼吸ができることになる。 これは横隔膜を下方に押し込む呼吸法なので、横隔膜の下にある乳糜槽からリンパ液の流れを促すには、とても都合のよい呼吸法と言える。 1分間に2~3呼吸を15分ほど、ただし、食後、2~3時間経ってからがよい。 それを日課としてこの呼吸法を行えば、鬼に金棒のセルフケアである。