東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ひだりの道 ③

「ひだり理論」の始めは、イダーナーディー(左の道)と言われる 「月の気道」、すなわち地球を回る 「月」 と 「人体」 との関係について話を進めたい。 我々の生命を支える血液も、地球生命体を育んでくれた海水にも、塩分、つまりナトリウムイオンがたっぷりと含まれている。 このナトリウムは地球の惑星である 「月」 のおかげで海に溶け出し、なくてはならない生命活動の根幹元素として利用されるようになった。

 

 ナトリウムというのは、単体では金属だが、水と接触することで反応し、ナトリウムイオンになる。 そして塩化物イオンとともにナトリウムイオンが水に溶けているのが食塩水であり、地球生命体の中にあるナトリウムはすべてナトリウムイオンの状態で存在している。

 

 人体の細胞すべてが何らかの形でナトリウムを利用して活動しており、特に大きく依存しているのが、「神経細胞」 と 「筋肉細胞」 である。 神経も筋肉も、細胞膜にナトリウムイオンを通す穴が空いており、ここからナトリウムイオンが細胞内に入ってくると、神経細胞は興奮状態になり、筋肉細胞は収縮を始める。 このように細胞機能の働きはナトリウムによって実現されている。

 

 地球の生命体は38億年前に誕生し、その後15億年間は単細胞生物として海を漂って暮らしていたようだ。 やがて我々の祖先は多細胞生物へと進化し、ついには脊椎動物となって陸上に進出するに至った。 しかし、個々の細胞はナトリウムイオンが豊富に含まれた海と同じ環境の中でしか機能を発揮できない性質であり、今なお変わらないままである。 それゆえ、その機能を発揮するため体内に用いられたのが、海水と同等の塩分濃度を持つ 「血液」 であった。

 

 血液は赤血球や白血球の 「血球」 と液体成分の 「血漿」 から成っている。 このうち、血漿は毛細血管から滲みだしてリンパ液となり、全身の細胞は、このリンパ液に浸された状態で存在している。 つまり、人体はリンパ液によって海の環境を再現していることになる。

 

 人類が大自然の中で生き残っていくために、生命体として高度な機能を発揮するには、必ずミネラルが必要となるが、その第一番に必要なのがナトリウムである。 生命はこのナトリウムを用いて進化することができた。 故に我々生命体にとって地球の海が塩水だったことは、最大の幸運であったものと言える。

 

  銀河系の惑星の中でも地球に誕生した海がナトリウムを含む塩水になったのは、地球の周りに月が回っていたためであるということも明らかになってきた。 この塩水のおかげで現在の生命が進化できたのは間違いのないことで、それを知れば夜空に浮かぶお月様の見え方も違ってくるのではないだろうか。

 

 地球の海を作った水分は、彗星や火星と木星の間にある隕石が運んできたものであり、当時その水分にナトリウムは含まれていなかったことが分かっている。 海が塩水になるには、ナトリウムイオンと塩化物イオンの両方が必要であり、このうち塩化物イオンについては、火山ガスとともに地球の内部から地表に大量に供給されていたため、海が誕生した直後に溶け込むことになったものと考えられている。 

 

 水に塩化物イオンが溶けると塩酸になるが、地球の初期の海は塩酸を多量に含んでいたことになる。 もう一方のナトリウムは、地殻にある岩石などに含まれており、これが海水の塩酸で溶かされ、濃度の薄い塩水になったというのが有力説である。 そこからが左の道である 「月」 の出番となり、海水を現在の塩水の濃度にまで高めることになるのだ。 

 

 現在、月は地球から38万キロメートル離れているが、45億年前に誕生した月は、現在の12分の1の距離の3万2千キロメートルしか離れていなかった。 それゆえ地球に与えるその影響は絶大で、引力も大きかった。 ところが地球の自転は月の公転よりはるかに速いため、地球の引力は地球の中心方向よりも前方にずれており、満潮が先行する分だけ遠心力がついて、月はその加速により地球から遠ざかっていくことになった。 今もなお月は、1年に3.5センチメートルずつ地球から遠ざかっていることが分かっている。 

 

 

 「操体マンダラ」は2021年7月22日(木)海の日に開催します。