東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ひだりの道 ②

 病気に深く影響を与える自律神経には、からだの左右バランスが関係し、その左右バランスというのは、「重心軸の移動」 や 「体重が乗る力」 や 「支点にかかる力」 が大きな要因となっているということを昨日述べた。 そして、ヒトの体重というのは、左右の足で均等に支えているのではなく、左右どちらかの足で多く支えているのが分かっている。 

 

 その多く体重を支えている方の足を 「自律神経系の利き足」 と言い、「支点にかかる力」 の足のことを言っている。 もう一つは、サッカーボールなどを蹴るときの、主に足の操作に関係する 「体重が乗る力」 の足は 「運動神経系の利き足」 であり、これらを区別して話を進める。

 

  つまり 「自律神経系」 と 「運動神経系」 のそれぞれに左右どちらかの利き足が存在することになるが、自律神経系に関するからだの 「重心軸」 においては、左右の利き足に関係なく常に 「ひだり重心」 であるということを特筆しておきたい。 これはインドのヴェーダ医学の文献を参考に説明してみようと思う。

 

  ヒトのからだの中には、ナーディー(気道)というプラーナ(生命素)の通り道が七万二千本もあるという。 そのうち特に重要な三大気道というのが、ムーラーダーラチャクラ(絵陰部)からアージュナチャクラ(頭頂部)まで流れていて、スシュムナー(中央気道)を中心にイダーナーディー(左の道)とピンガラナーディー(右の道)が螺旋状に対をなして絡み合っていると言われている。 

 

 左の道であるイダーナーディーはチャンドラナーディー(月の気道)とも呼ばれ、 陰陽論でいう陰を司り、会陰部のムーラーダーラーチャクラから左の鼻腔へと流れて右脳とつながっている気道である。 そして右脳を活発にして、副交感神経を優位にする。 タントラなどの左道密教もこの流れを汲んでいる。

 

  イダーナーディー(左の道)とピンガラナーディー(右の道)は、サンスクリット語で 「月」 と 「太陽」 を意味するもので、イダーナーディー(左の道)は月のエネルギーを運び、女性性、生殖エネルギー、母性などを司り、浄化力がある。 ヨーガの調気法において、吸気は、通常、「左鼻腔」、すなわち イダーナーディー(左の道)から始め、呼気については、「右鼻腔」、つまり、ピンガラナーディー(右の道)へと流れていくのだ。

 

 こうした左の道である月の気道は、器質的な病変は特に認められないものの不定愁訴といわれる、いわゆる 「自律神経失調症」 に大きく関与している。 この 「自律神経失調症」 というのは、交感神経と副交感神経のアンバランスによって、症状が現れる。 月の気道である左鼻腔を中心にする呼吸(チャンドラヴェーダー)では、左の道が優勢になって左鼻腔に生命素が流れ、精神的な力と関連していると考えられている。 その主な性質としては、同化作用や生産的活動と関連して、エネルギーの保持と身体への冷却効果があると伝えられている。

 

 ここで自律神経の不安定要因として、地球と月と太陽の位置関係とそれに関係する 「引力」 について考察する必要がある。 まず満月と新月では、「地球」 と 「月」 と 「太陽」 が一直線に並び、その引力は強くなっている。 また上弦と下弦の月では地球と太陽を結ぶ線と地球と月を結ぶ線が直角になり、引力は少なくなってしまう。 このことから満月と新月では、強い引力の影響を受けて、自律神経が不安定になり、心身ともにその影響を受けているものと思われる。

 

  医学は人間の生命を救うための学問ではあるが、徹底した実学であると言われている。 しかし、実用性ばかりを重視すると、人体の機能について体系だった理解が後回しにされる傾向もある。 そこにアストロバイオロジー(宇宙的な生命学)を持ち込むことによって生命の理解が格段に深まるであろうと愚考する。

 

 ここで改めて地球を回る惑星である 「月」 と 「人体」 との関係について考えてみることにする。 はじめに45億年前に月が誕生したことと、人体がナトリウムを使って筋肉や神経を機能させていることには、月と地球の間柄について、とてつもなく深いつながりがあることが分かってきた。 それは地球の生命体がナトリウムをどのように利用してきたのか、生命の成り立ちや起源といったアストロバイオロジーを自律神経疾患に結び付けて興味深く解き明かしていこうと思う。

 

 

 「操体マンダラ」は2021年7月22日(木)海の日に開催します。