東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ひだりの道 ⑤

 これまで話してきたように地球の有機生命体が月の影響なくして存在できないのと同様に、月も地球の有機生命体がなくては存在できない。 それは地球の有機生命体こそが月を養っており、すべての人間、動物、植物は月の食料であって、月は地球上で生き、成長するものを食べて生きている巨大な生き物なのである。 

 

 また月の成長と暖化のプロセスは、地球生物の 「生」 と 「死」 に直接結びついている。 地球生物のすべての死は、それ自身に生命を与えていたエネルギーの一定量を解放し、そのエネルギーの素粒子は、巨大な電磁石である月に誘引され、そして月を成長させる暖かさと生命を月にもたらすのである。 宇宙全体の経済という観点からは何も失われるものはなく、ある時点での働きを終えた一定量のエネルギーが別の次元へと移転するに過ぎないのだ。 これがいわゆる宗教でいう 「輪廻転生論」 である。

 

 さて、いよいよ 「ひだり理論」 の核心へと入っていくことになるが、それはプラーナ(生命素)の通り道であるイダーナーディー(左の道)、またはチャンドラナーディー(月の気道)とも呼ばれる気道の内容に深く関係している。 左の道である月の気道に何故、これほどまでに執着するのか? それはすでに触れた内容であるが、現代医学があまり考慮しない、不定愁訴の 「自律神経失調症」 に大きく関わっているからだ。

 

 この自律神経というのは、体温をはじめ、血圧、血糖、呼吸、瞳孔の大きさ、汗や唾液の分泌、尿の排泄、消化管の働きなど、多くの調節が行われている。 その調節は、エネルギー消費を伴う 「交感神経」 と、それとは逆にエネルギー消費を抑制、蓄積する 「副交感神経」 のバランスによるものである。 それがアンバランス、つまり、どちらか一方に偏りすぎると、二大白血球(顆粒球、リンパ球)の過剰反応により、病気が発症することになる。

 

 自律神経のアンバランスについて、ストレスによる交感神経の異常緊張と、ストレスを避けることによる副交感神経が優位になる疾患とがある。 これらのバランスを考えたとき、心臓の左胸からの拍動音とともに自律神経には、からだの左右バランスが関係していて、体重の多くを支えている方の足を 「自律神経系の利き足」 と言い、「支点にかかる力」 の足であると、先に述べたとおりである。 また自律神経系に関するからだの 「重心軸」 においても、左右の利き足に関係なく常に 「ひだり重心」 であるとも言った。

 

 我々の健康状態に深く関わっている自律神経系と呼吸の間には、相互に影響を及ぼしあっている強い関係が存在している。 というのは、呼吸を変えることで、本来意思の及ばない自律神経系を調えることが可能であるからだ。  自律神経のうち副交感神経につながる迷走神経は、脳の延髄、橋から出ているが、同じ部位に呼吸中枢があるため、双方での神経間はお互いに強く関連しあっていることから、呼吸運動次第で迷走神経活動をコントロールできるのである。

 

 このとき、からだの重心軸をひだりに置くのは、月の引力の影響により、地球の自転軸の傾きが人体にも影響を及ぼす。 つまり、心臓の拍動が左胸から聞こえることと、人体の機能においても 「ひだり重心」 にして月の気道である左鼻腔での呼吸と意識を融合させることによって、自律神経のバランスに働きかけるものである。

 

 そのときの呼吸における心臓の拍動については、吸気のとき速くなり、呼気では遅くなる。 これは肺の機能に 「伸展受容体」 というセンサーがあり、このセンサーを使って脳が常に監視しているからである。 この情報をもとに、脳内にある心臓血管中枢が心拍数を変化させている。 これを西洋医学では呼吸に合わせて脈のリズムが変わるので、「呼吸性不整脈」 と呼んでいる。 この呼吸性不整脈が大きいほど、心臓は望ましい状態であり、また自律神経もバランスが取れて調っている。 すなわち健康であるということだ。

 

 このようにひだり重心は意識と呼吸にも深く関係している。 からだのひだり重心といのは、調気においても 「重心軸はひだり」 であることから、ひだりの鼻腔に意識をおいて、「吸気」 から呼吸を始めるものである。 すなわち、これはヨーガのチャンドラヴェーダー(月の気道である左鼻腔を中心にする呼吸)において、イダーナーディー(左の道)に、プラーナ(生命素)を通すことにつながる。

 

 

 「操体マンダラ」は2021年7月22日(木)海の日に開催します。