(つづき)
庭のスミレの葉を食べるツマグロヒョウモンの幼虫に気が付いて数日。
いよいよ、我が家に自生するタチツボスミレの葉もなくなりつつあった。
昨年は昨年でホシホウジャクの幼虫の面倒をみていた時期があり、蝶や蛾の生まれ持った食性の一途さ、その凄さは経験済みだった。
昨年もまったく意図せず草にひっついて我が家にやってきたまだ名前のしれない幼虫の食性がわかるまで、つまりヘクソカズラの葉っぱを食べる幼虫だと気が付くまで、それっぽい葉っぱを与えても一向に食べない鋼の食性を目の当たりにしていたこともあり、今回も、もしもの時に備え、スミレの葉の散策を行っていた。
スミレは探してみると意外と見当たらない。
あまりにも見当たらないので、普段から自然観察が生活の一部になっている仲間に相談したりもした。
さすがの観察眼で、自転車で数分の所に一株自生している目撃情報など教えてくれた。そこは寺院の墓地の外側で、「外側に自生しているということは、墓地の中にはたくさん生えているのでは」という見立てだった。そういう捉え方ができるというのも素敵だと思った。
私の方でも、ようやくスミレが自生している場所を見つけたところで、試しに数枚摘んで持ち帰った。
ツマグロヒョウモンの幼虫は今日も定位置にはいなくて、少し離れた鉢のノビルにじっとつかまっていた。
このまま屋外で様子をみようかという気持ちと、でも幼虫が食べるものがもうないしなぁという気持ちが交錯し、最終的には余計なおせっかいが勝って、飼育カゴに移して飼うことにした。
ところが、摘んできたスミレを与えても一向に食べる気配がない。
気が付いたら虫かごの屋根にもぞもぞと移動してじっとしている。
自分が摘んできたのはスミレじゃなかったのか、、、
昨年の記憶が蘇る。またこの幼虫が食べられる草を見つけるまで、時間がかかりそうだなぁ、と例の墓地の周りに生えているスミレの様子を見に行こうかと思っていたところ、幼虫の口から糸のようなものが出ていて、虫かごの屋根にくっついているように見えた。
調べて見ると、どうやら蛹化の前兆らしかった。
たしかに、それから数日かけていままでの幼虫スーツを脱ぎすてて、蛹は段々と漆黒に染まり、その体表にはメタリックの格好いい柄を纏い始めた。
私が余計なおせっかいをするまでもなく、その幼虫はスミレを程よく食べつくし、絶妙な蛹化のタイミングを迎えていたのかもしれない。
人間の私が頭で考えていろいろ思案していたわけだが、自分のおかれた環境のことを、その幼虫の方がよっぽどからだ全部で感じて知っていたのではないかと改めて驚いている。