東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

バイロジック

今週のブログの前半は、中沢新一さんの本「対称性人類学」に依拠するところが多い。
詳しくは御一読願いたいが、そのエッセンスとも言うべき文章が、数多い著書の中で「芸術人類学」という本に出て来るので、それを抜書きしておきたい。

『どうやら私たち現生人類の心は、まったく仕組みの違う、二つの思考のシステムの共存として働き続けているようなのです。ひとつは外の環境世界の構造に適応できるような論理(それがアリストテレス論理というものの本質にほかなりません)の仕組みをもって作動する言語のモジュールで、それにしたがって生きるときには、私たちは合理的な行動ができるようになります。ところが現生人類の心にはそれとはまったくちがう、対称性の仕組みで動く層あるいは領域があります。そこでは、言語の論理が分離しておこうとするものをくっつけてしまい、ちがう意味の領域を隔てている壁を突破して、時間の秩序からさえも自由になって、多次元的にさかんに流動していく知性の流れがみられます。つまり、人類の心には、合理的な言語のモジュールにしたがって組織された非対称の論理で動く層と、現生人類の心を特徴づけている「流動的な心」の流れ出できた対称性の論理で動いている層とがひとつに結合している、「複論理=バイロジック」としてつくられているのです。』

本文の内容をふまえて、もう少し補足しておきたい。
・言語―非対称性論理―意識
・流動的な心―対称性論理―無意識
の対立構造と「バイロジック」がポイントである。

この本と、これらのkeywordによって、私の長年の疑問が氷解した。
例えば、音楽において、どの奏者、指揮者もほぼ一様に「譜面どおりに」「作曲家の意図したとおりに」演奏している、と言っているのに、なぜあれほどの個性的な演奏になるのか(聴衆はその個性の特徴を楽しみに会場へ足を運んでいるのではあるが)、原因はこの「バイロジック」によるものであったわけだ。


半蔵