東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

五里霧中


冬将軍が猛威をふるっている福岡の秋穂です。3日目のブログもお付き合いをお願いいたします。年末も押し迫ったこの時期になると年賀状づくりや大掃除、お正月準備など身辺が俄然慌ただしくなってきます。南国福岡でもこの時期にはお決まりのように初雪が舞い、本格的な冬の到来を知らせてくれます。(今年は確か12月中旬に2日間ほど降っていました。)時期になると思い出す童話があります。『かさじぞう』です。日本昔話でもよく知られているお話なので、皆さんご存じだと思いますので内容については触れませんが、この物語の中で、貧しいおじいさんが売れ残った笠を6体のお地蔵さんにかぶせてあげるのですが、売れ残った笠は5つしかなく、最後の一体には自分がかぶっていた手拭いをかぶせてあげるという場面があります。私的にこの手拭いをかぶせてあげるというおじいさんの行為って何とも操体的なアプローチなのではないかと思えてこころがじわ~んと温まってきます。まさに渦状波を受けている時のような身もこころもとろける温かさを感じます。おじいさんが他の5体のお地蔵さんにかぶせてあげた笠は、どちらかと言えば治療技術や知識、風雪に耐えているお地蔵さんを守ってあげたいという思いは感じますが、それはそこに笠があったからこそ出来た親切です。しかし、このおじいさんが6体目のお地蔵さんにかぶせてあげた手拭いはそのおじいさんの人格そのものなのではないでしょうか、本当に何も無いおじいさんがやむにやまれずかぶせてあげた手拭い、このお地蔵さんはおじいさんのかぶせてくれた手拭いのぬくもりを通じてこのおじいさんの熱い生命の持つぬくもりに包まれ癒されたに違いありません。おじいさんに贈り物をしようといった主導者は絶対手拭いのお地蔵さんに間違いありません。私もこのおじいさんのような治療家になりたいと思います。

では、前置きが長くなってしまいましたが昨日のブログで3日目に続くと書いてしまいましたので今回も若き秋穂の操体との自伝的恋愛小説を見てやってください。秋穂自身書きながら改めて操体への想いを再発見して新鮮な感覚を味わっています。なんだかカウンセリングを受けているみたいな妙な感じです。

最初の操体の講習会が終わてしばらく経っても、私はまだ何をすれば良いのかわからないまま、ただ一日一日を坦々と過ごしていました。地元福岡に帰るのでもなく、東京で新たな行動を起こすのでもなく、勤務していた整骨院の業務に追われながら日々が過ぎてました。そんなある日のこと私の部屋に最新の家電がやってきました。当時発売したてのApple社のI−bookです。初めて手にしたパソコンで早速インターネットを使って『操体法』と検索してみました。確か操体法公式ホームページに辿り着いたように記憶しています。そして操体法実施施設の中からホームページのある治療院を覗いてみた。良く作り込まれたホームページで、作成者の操体にかける想いがひしと伝わってくる。ここの先生なら何か私の迷いを取り去るヒントをくれるかも知れない。私は早速、ホームページ上から操体法の申込をして、約束の日時に西葛西行きの東西線の電車に飛び乗った。嬉し恥ずかしの初操体体験なのである。無意識のうちに鼻歌唄うやらスキップ踏むやら、どこからみても悩みなどなさそうな能天気さ加減で西葛西の駅に降り立った。そこから歩いて数分のマンションの一室にその療術院はあった。『貞山療術院』現在の操体医科学研究所TEI-ZANそうその時に開いたホームページは東京操体フォーラム常任理事の畠山先生の治療院だったのだ。操体界のゴット姉ちゃんとの御縁であった。私は施療室に通され、カウンセリングシートに名前やらなんやらを記入し、カウンセリングが始まった。今も昔も変わらず年齢不詳の美人治療家(お世辞)畠山裕美先生は非常に淡々と私のからだの様子を聞いたあと「ではまず足の操法」から入っていきますね。」と私を施療ベッドに横になるように促すと、私の足の指一本一本を丁寧に揉み始めた。愛想は恐ろしく悪いのに、とても暖かく柔らかい手であった(様な気がする)。講習を受けてはみても全く操体の治療を受けたことのなかった私にとっては全てが新鮮で全てが鮮烈なインパクトとして私のからだを突きぬけて行った。実際に初めて足関節の背屈の操法を受けた時などは、脱力した際に激しい雷が脊柱を頭の方に駆け上っていくような感覚を覚えた。とにかく驚きの連続の内に1時間ほどの施術は終わった。しかし、その後にさらに驚くべき光景が広がっていた。施術時間より長い操体談義、丁度この直前に伝説の全国バランス研究会東京大会が開催されていて、畠山先生がバラ研に参加した感想や東京近郊の操体の指導者の現状、そしてバラ研東京大会の実行委員長であった三浦寛先生の偉大さ、とにかくもう私は施術を受けに来たのではなくて、講習を受けに来ていたのだと錯覚されるほどの内容で僕の知的好奇心をくすぐってくれた。私はすこぶる爽快な面持ちで来る時の2倍の声で鼻歌を唄い、2倍の歩幅でスキップして帰った。この時畠山先生の熱き操体に活を入れられた私の操体は少しづつ熱を持ち始めていました。この操体の話をし始めたら熱くなりすぎる畠山常任理事の性格は今も健在で、たまには聞いている周囲がハラハラする位に白熱することも少なくないのですが、この操体を愛する熱き心には本当に頭が下がります。丁度この頃から僕の周りの操体環境が変化してきました。それでは次回4日目は、運命の出会い?その時歴史は動いた!をお送りします。


秋穂一雄


かさじぞう(こどものとも絵本)

かさじぞう(こどものとも絵本)

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