東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

第二分析

 五日目は、「楽な動きではなく、身体運動の法則(重心安定の法則・重心移動の法則・連動の法則・呼吸との相関性・目線との相関性の3法則と2相関性)に基づき、ひとつひとつの動きに対して快適感覚の有無をからだにききわけさせる動診(診断)と、快適感覚がききわけられたら十分に味わう操法(治療)」これを第二分析と呼んでいます。本日は「感覚」を中心としたアプローチとなる第二分析の機序について書きたいと思います。よろしくお願いします。
 第二分析の機序について説明したいと思います。ひとつひとつの動きについて、感覚をからだにききわけるということは、大脳皮質運動野から錐体路によって下行してきた骨格筋の随意運動の動きに対して、筋・靱帯・関節の深部感覚の感覚が存在します(身体運動の法則に基づいたゆっくりとした動きの感覚に意識を向ける必要あり)。普段の動きでは気にすることのない感覚です。この深部感覚の感覚はAβ線維によって脊髄後索へ伝わり、意識にのぼる深部感覚として後索路という上行性伝達路から、視床を経て大脳皮質感覚野まで伝わり、この流れでからだの動きと感覚のききわけ(感覚分析)が可能となります。ひとつの動きに対しての感覚に「快」の有無をききわけることで、大脳で快適感覚として認識され、動診(診断)となります。ここからの行程は操法(治療)となります。快適感覚を味わうことによって脳内のホルモン反応(分泌)が起こり、この反応が錐体外路赤核脊髄路、上丘(視蓋)脊髄路、前庭脊髄路、間質核脊髄路、網様体脊髄路が含まれる)によって、大脳皮質から大脳基底核視床、小脳あるいは聴覚、視覚などの感覚器からの情報を取り入れながら、フィードバックを繰り返して脳幹へ行き、様々なからだの反応を引き出しながら脊髄を下行していくことになります。この時のからだの動きや反応は、無意識の動きとなります。この無意識の動きによって再び筋、靱帯、関節の深部感覚がAβ線維で脊髄後索に伝わり、意識にのぼらない深部感覚として小脳皮質に伝達され、更なるからだの反応に繋がるのです。これが感覚をききわけ、快適感覚を十分に味わうことによって起こるからだの反応機序となることが考えられます。

 質の高い快適感覚を味わうことで、からだにとって必要な様々な反応をからだ自身が選択をし、からだの感覚に委ねることで、脱力の間合いを含め脱力方法や、回数の要求など、すべてをからだの感覚にききわけた臨床を可能にしてくれるのです。
 痛みなどの不快体験は脳に記憶されることもあり、痛みの記憶は、慢性痛としての原因を作り出すだけでなく、ストレスによる心因性、情動の問題に深く関与する扁桃体などの働きと大きく関わり、からだの多次元の痛みを脳内で作り出すこともある(ニューロマトリックス理論)という症状や、自律神経など様々なからだをコントロールする中枢が脳にあります。これらの脳内の状態に変化をもたらすのは、からだの筋肉・靭帯・関節などの部分的要因ではなく、「快」という感覚によるホルモン分泌や細胞などのからだ全体の反応が効果的だと考えられます。
 「楽」という動きと「快」という感覚や無意識の動きとの違い、「楽」と「快」へのアプローチの違いについて区別できているのかどうかで、からだの反応は全く異なる反応となります。「楽」と「快」との違いについて 我々操体を学ぶ者が、理解・区別できていないと、きっとからだは混乱をきたしているのではないでしょうか。
 今日はこの辺りで・・・。ありがとうございました。