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甲野 私が一番愛読している武術所 『願立剣術物語』 に 「中央と言う事有り・・・・・」 から始まる名文がありますが、
そこに 「右へもよらず左へもよらず、上えも下へも付かず、本より敵にも付かず、太刀にもたれず十万を放れて中道を行く事也・・・・・」と、この夢想願立(流)という剣術の術理が説かれています。
この文章は、もちろん受け取れるレベルによってその気づく内容もまるで違ってくるとは思いますが、
身体的に見れば、かたくなってはいけない、だからといって、”だらっ”と緩むわけでもなく、喩えていえば糸電話の糸は引っ張り出されれば切れるわけですけど、緩んでいたら音が伝わらないですよね。
何かそういうようなある程度のテンションがある状態だということではないかと思います。
最近は身体の使い方に関して、リラックスさせろ、もっと暖めろ、という意見が多いのですが、言葉でその辺りをうまく伝えるのは難しいですよね。
暖め過ぎでだらっとなると、結局、力を伝えるのに体がうねってしまいますからね。
[参考文献]
- 作者: 甲野善紀,小池弘人
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/06/14
- メディア: 新書
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物事には最適の緊張状態があって、且つそれが静止しているのではなく、バランスをとりながら瞬時にへんかしている。
これがより良く生きている、という事でしょう。
生身の人間 (治療者)が生身の人間の患者と臨床という場で出会い、やりとりする訳ですから、そこに最適の時空の生むべきなのです。そこに善悪はありません。
只 「ふさわしい」事を目指すのみ。それより外はありません。これが本書で言うところの 「最善手」 でしょうか。