2015-03-27 6、男の一生 半蔵(はんぞう) もちろん、異論はございましょうが、・・・ 「平八郎に、こうつたえてくれ。よいか・・・男というものは、それぞれの身分と暮しに応じ、物を食べ、眠り、かぐわしくもやわらかな女体を抱き・・・こうしたことが、とどこおりなく享受できうれば、それでよい。いかにあがいてみても人は・・・つまるところ男の一生は、それ以上のものではない。人にとって、まことに大切なるは天下の大事ではのうて、わが家の小事なのじゃ。このように、わしが申していたとつたえてくれ、よいかや」 池波正太郎「さむらい劇場」 より