訪問の仕事をしていて思うことがあります。それは生きるうえで、「つながってるかんじ」がいかに大事かということです。
介護老人福祉施設に入居の90才の女性(Eさんとします)を週に一度みさせていただいております。
Eさんは、廃用性萎縮でほぼ寝たきり、食事は食べる気力がないため胃ろうになり、会話も徐々にしなくなられました。
私が伺う時は、皮膚への接触で二つのイノチがつながっている感じを臨床で味わい、返事は返ってこなくとも、からだにはどんどん話しかけてみています。最近では、足趾の操法、皮膚への問いかけに、からだは快の反応を示してくださり、施術を重ねるごとに特に胸郭、顎関節の歪みが自然なかたちに変化してきました。
施設の中にも東洋医学を学ぶ方がおり、暇を見てはお灸やマッサージなどをしてくださっているとのことです。寝たきりの生活でいながらも、皮膚はつやつやで、健康さを感じさせる毎日を送られています。誤嚥の危険性も驚くほど減りました。
そんな中、月に一度の割合で「なんだか今日は筋肉の質が違う」「イキイキしている」と感じる日があります。施設の方にそれを報告すると、たいてい前日に親戚の方が面会にいらしている日に重なっていると教えてくださいました。看護スタッフは「遠い親戚だから仕方ないけど、もっとこまめに会いに来てくれれば、もっと元気も(リハビリを)やる気もでてくれるんだけど」と残念そうに話されていました。
件の50代の甥御さんに、私もお会いしたことがあります。彼が一生懸命話しかけているのですが、彼女の反応はやはり薄い。「いつも会話はそんなにできないのですが、何か私にできることはありますか?」と問われ、その時は「とにかくそっと触れていてください。気持ちがいいと感じられるとからだも安心すると思います」というようなことを話した気がします。
その後は不器用そうな手つきでわしわしとマッサージされていたような気もしますが(笑)、なんだか甥御さんの「何かしてあげたい気持ち」が伝わるような気がして、こころが和んだ覚えがあります。
そしてその次の日には、Eさんのからではちゃんと応えてくれるのです。それは自分に所縁のある人とつながってることの喜びをからだがちゃんと味わっているからなのではないでしょうか。
「つながっているかんじ」は、歪み、混乱、無秩序の状態から、調和、安定、パワフルさに導いてくれます。つながっていることを表現するのは自然の法則に適っていると思います。
反対に、否定的な言葉を使う、感情にまかせて暴言を吐く、無視をする…。つながることから遠ざかることをすれば何が生まれるかを考えればやってはいけないことも自然とわかるのではないでしょうか。
近所の人に笑顔で挨拶する。
数人で楽器を演奏して一つのハーモニーを楽しむ。
単身赴任先で子どもの写真をみる。
困っている人に、「私はここにいますよ」という安心感を渡す。
日記をつけて自分とつながる。
からだの声(感覚)に耳を澄ませて、ききわけた気持ちのよさを味わう。
呼吸や意識をとおして、からだ、イノチとつながる。
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人は基本的には一人です。孤独でいなければいけない時もあります。けれども、大切な人と、そして自分と「つながっている感じ」を味わうと、もっとハッピーになれると思います。
方法はいろいろありますので、お家で、会社で、友達に、思いついたことを今ここですぐ!実行していただきたいですね。
マドリードはフォーラムが始まったようですね。
操体を通して、橋本先生の想いが参加者の皆さんとつながりはじめました…。
では、1週間のおつきあいいただきありがとうございました。
山野さんにバトンをつなげます。
明日からよろしくお願いいたします。
森田珠水
9月18、19日スペイン、マドリードにて「操体フォーラムin マドリード」開催。
11月20、21日千駄ヶ谷津田ホールにて2010年秋季東京操体フォーラムが開催されます。
2010年8月、社団法人日本操体指導者協会を設立しました。