人間のからだの中には生理的、心理的な力となって流れるエネルギーがある。四日目は、このからだの中を流れる生体エネルギーについて検証してみる。
まずエネルギーとは一体何なのか? 物理の本を開いてみると、仕事をなそうとする系の状態で、その仕事が実際になされているときは力学的エネルギーであり、状態がまだ運動に変じていないうちは潜在エネルギーとなる、といった定義が見つかる。この定義に従えば、エネルギーは運動と同じものである。宇宙の現象はすべてエネルギーの産物であるから、万物はことごとく運動し振動していることになる。
我々はこの法則を、現代物理学の波動力学やマックス・プランクのエネルギー量子説によって教えられている。この波動としてのエネルギーは宇宙全体にみなぎり、物質の中の原子、陽子、光子の運動として見出される。この物質が何であるのかと言えば、アインシュタインなら「宇宙空間の中で圧縮されたエネルギーの特殊状態にすぎない」と答えるだろう。すなわちエネルギーは質量と光速の二倍をかけたものに等しいということになる(E=mc2)。
生物は物質の特殊な一現象であって、生物特有の性質が与えられているが、物質とエネルギーと運動は同じものだという宇宙の大法則から決して逃れられない。事実、生物体の中のすべてのものは振動している。地球上に生息する全生物の細胞の一つひとつは、それぞれ一個の小宇宙をなしていると言っていい、そこでは超ミニサイズながら大宇宙の諸現象がすべて再現されている。
操体操法における感覚の初歩的段階でも、自分のからだの中に全宇宙を支配している振動と同じものを直接感じとれるようになる。すなわち、被験者がからだの末端からの動きを通して全身に連動させることができたなら、からだ全体にそって振動の波が走るのを感じることができる。それはまるで、からだに低電圧で電気を流されたような感覚である。筋肉の一つひとつが、からだのあらゆる部分に微妙な振動を受けることになって、それは最大の快さをさそう快感の一つである。
創造の世界にあるすべてのものがエネルギーの表現形であり、さまざまな振動率を持っている。我々自身、からだも心も宇宙エネルギーが特定の形になって表れて来たものにほかならない。この宇宙エネルギーは未分化の原子エネルギー形態によってその姿を現す。たとえば物質の物理現象、いわゆる状態変化として、一定の形と、体積のある状態、すなわち濃密な状態にまで凍結した「固体」、固体と同じように体積はあるが、一定の形のない遷移状態の「液体」、そして体積も一定の形もない原子状態の純粋エネルギーに戻る寸前の状態である「気体」という三種類の異なった形をとっている。が、これらは同じ数の同一分子の集合体がただ形を変えているにすぎないのである。
そんな物質の状態変化の中で、固体が気体に変わることと、逆に気体が固体に変容する物理現象も共に「昇華」という。また精神が高揚することも同じように「昇華」と言っている。これは固体としての肉体が微妙な振動によって振動率の高い蒸気エネルギーのような物質状態にいたることで、これが操体で言う、いわゆる「快適感覚」なのである。