東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

直立の進化

 昨日の続きで、四日目のシンカは、直立の進化の内容をさらに深めたい。

 

 昨日、人類は直立二足になったことで、膝と股関節を曲げる必要がなくなった初めての陸上動物であり、その膝と股関節を伸ばした状態を維持するのに、大腿部後面のハムストリングと下腿部のヒラメ筋を使っていると述べた。

 

 ところで、膝と股関節を伸ばしておくには、殿筋で大腿骨を後方に引き付け、脚を支えているからこそ可能となる。 また、その殿筋を働かせているのが骨盤、正確には仙骨の角度がとても重要であり、仙骨を後傾すると殿筋は強くなり、前傾すると殿筋は弛んでしまうことになる。

 

 ここでひとつ誤解を説いておきたい。 筋の機能解剖などが書かれた本には、大腿四頭筋は 「膝を伸ばす作用」 があり、ハムストリングは 「膝を曲げる作用」 がある、と書かれている。 それについては、実際に少し膝を曲げて立ってみると、確かに大腿四頭筋を使っているのがわかる。 しかし、そこから膝を伸ばしていき、伸びきったところでは、前面の大腿四頭筋は弛んで働かなくなり、その代わりに、後面のハムストリングが働くようになってくる感覚がつかめるはずである。

 

 このように大腿四頭筋からハムストリングや大殿筋の働きに移ることで、拇趾の付け根にある拇趾球が大地にしっかりと押しつけられているのが実感できる。 実を言うと、このとき働いているのがヒラメ筋であり、この筋肉が働いていると、ハムストリングは膝を伸ばす筋肉に変わる。 逆にこのヒラメ筋が働いていなければ、ハムストリングは膝を曲げる筋肉になってしまう。

 

 さて、直立二足の形態において、運動生理学によると、自然な膝の伸展角度といわれているのは五度までとされているが、その五度を超えると、膝が後方に反った状態になってしまう。 こうした状態にすると、ハムストリングやヒラメ筋を働かせているのではなく、膝の後ろの靭帯や関節包に寄りかかった状態になってしまう。 

 

 この直立姿勢を側面から見ると、膝側面の中心線が外踝よりも後ろに位置している。 これが、俗に 「反張膝」 と呼ばれているものだ。 この反張膝というのは、膝の組織上ストレスのかかった状態になっており、膝の前面に痛みを伴う原因にもなる。 歩くことが少なくなった文明人では、このような立ち方をしている人が非常に多い。

 

 こういった直立二足の立ち方について、現代人は本来あるべき人類の進化からみれば、退行しているようにしか思えない。 人類として進化した自然な直立二足を具体的に言うと、膝の力を少し弛めて立つことにより、膝は曲げるのではなく、自然に僅かに曲がってくる。 それは大腿部後面において、少し緊張気味に膝を支えた状態となり、膝蓋は少し上方へ向いてくる。 これこそ自然な直立二足というものである。 

 

明日に続く

 

 

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