東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

あるがまま、正直に。

おはようございます。

 

昨日、石田梅岩の倹約の教えについて少し書きましたが、梅岩はこうも言っていたようです。

「人間はそもそも正直な存在である。しかし、欲はその正直を損ねて(隠して)しまうものである。その本来の正直に人間を返すのに必要な行いが倹約であるから、私欲を離れて物事をあるがままに行えば、それがすなわち正直となり、また、正直で行う倹約は人の助けになり、社会の役にもたつ」

 

この「私欲を離れて物事をあるがままに行う」。これは頭で考えるほど単純ではなく、奥の深い行いなのです。継続して心掛けて実践してみれば、まざまざと実感することになると思います。

そこで梅岩は倹約を奨励した。「3つ入るものを2つにてすむように努める」これは物事の本質がしっかり把握できるほど、より的確に実行できるものだと思います。

自然界に存在する全てのものには、それぞれ特有の性質があります。その性質を把握し、どう評価、判断し、見究めて、あるがままの行いとするか。

そのためには、当然その性質に関する知識も必要ですし、知識だけでなく実践をとおし経験を重ねながら本質を捉えていく必要があります。

それでも、その見極めを迷わせるのが欲であり、それによってありのままの本質が見えず、あるがままな正直な行いにつうじなくなる、ということなのだと思います。

ですから、その欲で迷わない為にも、まずは公共の益という事を意識した上で、精進を重ねていけということなのだと思います。

 

また、梅岩は門下生から「倹約の大意如何」と問われた時に、「万事物の法に随うのみ」と答えたといいます。

つまり、そのもの自体のもつ本質をしっかりと把握し、大事にし、あるがまま最大限に生かすことが最善の倹約法だという事。

 

何週間か前にテレビで、90歳代の寿司職人の方と70歳代の天ぷら職人の方が、お互いを意識しながら高めあっている様子を伝えていましたが、何を高めあっているかといったら素材の善さを最大限に引き立てるという事を高めあっていたのですね。

余計なものは足さず、本来のあるがままの善さを正直に引き出す。

この行いは、今日の出来が良かったから、今日に比べて昨日は悪かったという比較対象の世界ではないと思います。昨日も良かったけど、今日は更に良くなっている、素晴らしい、という捉え方に自然となってしまう世界なのでしょうね。

そこには、歓びや感動、幸福感など付加価値がどんどん加わっていくのだと思います。

素材への貢献、食べる人への貢献、食べた人が明るく前向きになれば、社会の為ともなるでしょうね。

 

「根性」この言葉の元々の意味は、その人の本来的に持っている性質とか、あるものに特有な性質ということみたいですね。そこから、物事をあくまでやりとおす精神とか気力という意味になっていったようです。

あるがまま、正直にと日々努める事は、プロ根性を育むという事にもつながると思います。

 

参考文献 

魂の商人 石田梅岩が語ったこと

魂の商人 石田梅岩が語ったこと