我が家の小さな庭には誰が植えたのか、はたまた勝手に生えてきたのか、由来知らずの柑橘類が一草、ひっそりと暮らしている。
不勉強な私には本当の名前すらわからないこの生き物は、時期になるとあおむしたちの一時の住処となる。今年もアゲハの幼虫が3匹ムシャムシャとその葉っぱを食んでいた。
与えるのはお水くらいなもので、それ程大きく育っているわけでもない、この植物に今年は3匹のあおむしが同居しているのを見て、「はたして葉っぱは持つだろうか」と心配しながら毎朝観察していた。アゲハの幼虫は一日で予想以上に成長する。朝会うたびに大きく、また姿も変化していく。そして、葉っぱはどんどん食べられて減っていく。
小さな草丈の残りの葉っぱがほんの数枚になった頃、気が付いたら幼虫がいなくなっていた。いや、よく見ると、いなくなっていたわけじゃなくて、その茎や根本や葉っぱの陰に、同じ色をしたさなぎになってつかまっていた。
幼虫たちのおなかを、今年もうちの一草はなんとか満たしたらしい。
でも、残る葉だけで、己のいのちをつなぐことができるだろうか。
そんな勝手な想いを抱きながらも、やる事と言えば気が付いたときに水を与えるくらいなもので、そのまま様子をみていた。それから数か月、葉っぱは見事に復活した。
あの小さな深緑に、3匹のいのちが間借りをすることとなり、そして、絶妙な食べ残しをしてくれて、トゲトゲのからだはまだいのちをつないでいる。
これが偶然なのか、それとも目に見えない生き物たちのバランスなのか。
今年お世話になったアゲハの親類が、来年訪ねてきたら、また観察してみようと思う。